【1月23日 AFP】古代エジプト王(ファラオ)が永遠の命をもたらす神としてあがめたナイル川(Nile River)。人間の活動に伴う気候変動や汚染、開発の影響で、危機に直面している。世界で2番目に長く、約5億人の生命線であるナイル川は、豊かな流れを維持できるのか。AFP取材班がエジプトからウガンダまでの各地で、衰えつつある現状を取材した。

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■巨大ダム

 エチオピアはアフリカでも経済成長が著しい国の一つだ。ただし、人口1億1000万人の半数以上は電気のない生活を余儀なくされている。

 政府としては、ナイル川の支流の一つ、青ナイル川(Blue Nile)に建設した大エチオピア・ルネサンスダム(GERD)が問題解決の切り札になると期待している。近隣諸国との間で問題が起きれば、外交断絶も辞さない構えだ。

 2011年に建設が始まったこのダムの貯水量は740億立方メートル。すでに3分の1近くたまっている。政府は、アフリカ最大の水力発電プロジェクトとうたっている。

 アビー・アハメド(Abiy Ahmed)首相は昨年8月、「ナイルはわれわれエチオピア人が活用するようにと神が与えてくれた贈り物だ」と語った。

 しかし、1959年にエジプトとスーダンが結んだ協定では、ナイル川の年間平均水量の66%はエジプト、22%はスーダンが利用できると規定されている。協定の締約国ではないエチオピアが示した疑義は、エジプトにとって大きな頭痛の種となっている。

 2013年、エジプトのムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)大統領(当時)側近は死活的に重要な国益を守るため、大エチオピア・ルネサンスダムを爆撃する案をぶち上げたこともある。

 アブデルファタハ・シシ(Abdel Fattah al-Sisi)現大統領も、同ダムが原因でナイル川の流量が激減することを懸念している。

 学会ではエジプトが失う水量をめぐる議論が過熱。影響は小さいと評価した研究者は、「国賊」と批判されている。