【1月12日CNS】ひき肉1人前にトマトを発酵させたスープ「酸湯」、そして手作り麺。中国内陸部の寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region%)中衛市(Zhongwei)中寧県(Zhongning)の特産「中寧ヨモギ麺」は、同自治区の無形文化遺産である。一見普通に見える麺は、中寧出身者にとっては思い出の味だ。

 中寧ヨモギ麺は、洗練された素材と複雑なプロセスを経て作られる。ヨモギの種は小麦粉と組み合わせるとコシの強い麺になる。麺作りと同時に羊肉やクコの実、サヤインゲン、豆腐、トマト、キノコなどと混ぜてひき肉を作る。

 こねる、延ばす、乾燥させる、積み重ねて切るなどの作業を経て、絹の糸のように細い緑色の麺に変わっていく。

 さらに、特産のスープ「酸湯」を作り、羊肉のミンチを炒め、細麺を鍋でゆで、水で絞めて粘りを洗い流し、器に盛る。そこへ、酸湯を注ぐと、豊かな肉のうまみが引き立つヨモギ麺のできあがりだ。

 于振苓(Yu Zhenling)さんは2007年に、無形文化遺産プロジェクトで中寧ヨモギ麺の代表的継承者に選出された。それ以来、麺屋を経営しながら多くの後継者を育成してきた。近年はネット通販で売り上げを伸ばし、売り上げの多くが通販からだという。

 この麺店に食べに来た馬海龍(Ma Hailong)さんは「母親と祖母が生前、ヨモギ麺を作ってくれた。夏は、唐辛子大さじ数杯を入れて食べると、全身から汗が噴き出し、清涼感が増して気持ちよかった。冬には温かい麺をミンチと一緒に食べると、ほかほかして寒くなくなった」と振り返る。

 中寧では、ヨモギ麺は空腹を満たすだけでなく、地元の人びとの出産、試験、昇進、結婚など人生の節目で食べられてきた。前出の于さんは「この地で何千年もの間受け継がれてきたヨモギ麺は、すべての人の記憶に刻まれています。ヨモギ麺を作ることで、この地の歴史を受け継ぐことができたらうれしいです」と語る。(c)CNS/JCM/AFPBB News