【1月10日 Xinhua News】中国のSF小説「三体」シリーズの日本語版を監修・翻訳した立原透耶氏がこのほど、新華社の書面インタビューに応じ、今年は日本でより多くの中国SF作品に関する企画を進め、両国の読者がSFを懸け橋として文化交流と理解を深めることができるよう尽力したいと語った。

 SF作家でもある立原氏は長年、中国のSF小説を翻訳し、日本で紹介することに力を注いできた。昨年12月には「三体」シリーズの日本進出への貢献が評価され、中国SF文学の世界への普及に貢献した人を表彰する第13回中国星雲賞「星橋賞」を日本語版の他の関係者と共に受賞している。

 立原氏は「一介のSFファンがここまで評価されて、ただただ光栄」とし、自らの役割について、日本では中国の、中国では日本の作品を紹介することだと語った。

「三体」第1部の日本語版は2019年7月に発売されると、日本に一大ブームを巻き起こし、増刷を続けた。

 立原氏は「三体」が日本市場で成功した理由について、中国の歴史や文化、風物に関するしっかりとした描写と優れたSF設定が評判を呼び、SF小説ファン以外の層にも広がって、社会現象になったことを挙げた。「興味深いのは、それまでSFを読んでいなかった人々が読むようになったこと。特に中華圏とのやりとりがあるビジネスマンたちがたくさん手に取るようになった」と指摘する。

「三体」以外にも中国のさまざまな作家の作品を監修・翻訳しており、日本の読者に中国のSF小説をより速く全面的に理解してもらいたいと「時のきざはし 現代中華SF傑作選」も編集した。立原氏によると、今年はアンソロジーの第2弾「宇宙の本屋」を予定しているほか、中国のSF作家、韓松(Han Song)氏の「紅色海洋」の日本での出版や中国SF作品で中国語を学ぶ企画も進めている。「短編集とアンソロジーもどんどん出していきたい」という。

 21年には「中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績」に対して、第41回日本SF大賞特別賞が贈られた。「三体」の著者、劉慈欣(Liu Cixin)氏から「立原透耶さんは中国文化と中国SFに対する自らの広く深い理解で、中日SF文学の間に橋を懸けた」との祝賀メッセージが寄せられている。

 立原氏は大阪生まれ。小学生の頃に「水滸伝」を読んだのが、中国の小説にはまるきっかけとなった。大学時代には金庸(Jin Yong)や古龍(ク・ルン)の武侠小説に夢中になり、他に面白い本はないかと探すうちに中国のSFに出会ったという。中国SF作品の魅力は、日本よりも繊細で示唆に富んでおり、哲学的な要素も歴史的な要素も深いところだと語った。

 日中両国のSFファンに対する印象については、中国のファンは若者が多く、勢いがあると指摘。共通点はSFへの愛情、相違点は国際性だとし「日本はまだ中国のような国際性を身に付けていない。とても羨ましい」と話した。

 第81回世界SF大会が今年、四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で開かれる。立原氏は参加を楽しみにしており、本の共同出版や互いの往来を増やすことで両国間の文化理解を促進したいと考えている。(c)Xinhua News/AFPBB News