【12月30日 AFP】ロシアでは年越しを華やかに祝うことが伝統になっている。だが、今年は異例の年だった。

 ウクライナ侵攻により10か月間にわたり続く激しい戦闘や、予備兵動員の混乱を受け、国内の祝賀ムードはほぼ消滅。首都モスクワでは、雪に覆われた街がイルミネーションや装飾で彩られる一方、ウクライナに派遣された兵士の写真もところどころに飾られている。

 ロシア軍が多数の戦死者や大きな後退を被った一年の終わりに当たり、国民の間では、例年通り祝賀行事をすべきなのかという疑問が生じている。モスクワ市当局は、戦闘が続く中で祝賀に大金をつぎ込むことを避け、毎年恒例の花火の打ち上げを中止した。

 AFPの取材に応じたモスクワ在住のナジェージダ・アルヒポワさん(40)は、花火の中止を支持。その分の予算を「私たちの防衛者」である軍隊と動員兵に向けるべきだと語った。

 動員兵については、十分な装備を与えられないまま戦場に送られたことが広く報じられ、国内で怒りの声を呼んだ。アルヒポワさんは「何よりも、兵士に質の高い装備がないことがあってはならない」と訴えた。

 モスクワ中心部の赤の広場(Red Square)では、乗り物のアトラクションや菓子の屋台が並ぶ冬の市場がにぎわいを見せている。広場の中央には冬の風物詩となっているアイススケートリンクが設置されている。

 だが、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、赤の広場で開かれる年末恒例のアイスホッケーの試合を中止。さらに、20年間にわたる自身の政権で定番となっていた長時間の新年記者会見も取りやめ、深夜の国民向け演説のみ行うことを決めた。

 ゴーリキー公園(Gorky Park)では、新年を祝うイルミネーションや、装飾が施された木製の小屋に交じり、ロシア軍によるウクライナ侵攻のシンボルである「Z」の文字などが設置されている。

 来年に向け、モスクワ市民の多くに共通する願いが一つあった。それは「戦闘が終わること」だ。

 保育士のイリナ・シャポワロワさん(51)は、「頭上に平和な空が広がることを一番に」願っていると語った。「多くの人が苦しんでいる」