【12月30日 AFP】ウクライナ首都キーウでテチャーナ・ミトロファノワさん(58)が経営するレストラン「二兎追う者(Chasing Two Hares)」では長年、ニシンの酢漬けと根菜のサラダ「シュバ」とポテトサラダ「オリビエ」が大みそかの定番メニューだった。

 しかしロシアによる侵攻が続く今、伝統的なロシア料理のこの二皿を客に提供するわけにはいかない。ミトロファノワさんだけでなく、キーウ中の飲食店が年越しを祝う代替料理探しに奔走している。

 生演奏が楽しめる「二兎追う者」では毎年12月31日に、にぎやかなパーティーを開く。「ページをめくらなければならない」とミトロファノワさんは言った。「この国で起きていることは、今や私たちと世界との関わり方にも影響している。今風を目指さないと」

 ロシアが2月にウクライナに侵攻する以前から、両国間では「食」が紛争の紛争の矢面に立たされてきた。2020年には東部ドンバス(Donbas)地方で戦闘が続く中でウクライナが、ビーツとキャベツを使ったスープ「ボルシチ」を自国の無形文化遺産に指定するよう国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)に働きかけ、ロシアと論戦になったのだった。

 侵攻はこうした状況に拍車をかけた。2023年を迎えようとするキーウやウクライナ各地で、愛国心を料理で表現しようという機運が高まっている。

「オリビエサラダとシュバを出さないのは今年が初めて」とミトロファノワさん。大みそかのパーティーメニューは、カワカマスの詰め物など地元キーウの伝統料理を中心に一新した。「一生忘れられない夜になるだろう」