【12月27日 AFP】アルメニア人のルザン・ホバニシャンさん(39)は、アゼルバイジャン内の係争地ナゴルノカラバフ(Nagorno-Karabakh)とアルメニアを結ぶ唯一の道路がアゼルバイジャン側に封鎖されたため、ナゴルノ在住の家族に会えないまま新年を迎えることになるのではないかと心配している。

 アルメニア系住民が多数を占めるナゴルノは、ラチン(Lachin)回廊でアルメニアと結ばれている。しかし、アゼルバイジャンの活動家が今月12日、回廊を封鎖。ナゴルノの鉱山で「違法採掘」が行われており、環境が汚染されているというのがその理由だった。

「家族は皆、ステパナケルト(Stepanakert)にいるのに」と、ホバニシャンさんはナゴルノの主要都市名を挙げた。今月、仕事でアルメニアの首都エレバンに出張したが、道路封鎖のため帰宅できなくなったという。

 同じくステパナケルトに住むアショット・グリゴリャンさん(62)は、「店の棚はほぼ空だ。パンがあるのが救い」だと話した。ナゴルノの住人は約12万人。食料、医薬品、燃料不足に直面している。

 アゼルバイジャンの活動家は「違法採掘」への抗議行動を続けている。同国政府は、抗議は住民が自発的に行っていると主張しているが、アルメニア政府は、アルメニア系住民に土地を放棄させることを狙ったものだと反発している。

 同国のニコル・パシニャン(Nikol Pashinyan)首相は、ラチン回廊に配備されているロシアの平和維持軍が「違法な封鎖」を阻止しなかったと抗議している。

 26日、現場に集まっていたアゼルバイジャンの活動家グループは、封鎖を否定した。取材に応じた一人は「われわれの要求は天然資源の違法利用をやめさせることだけだ」と強調。人道支援物資の輸送を阻止しているわけではないと語った。ただ、抗議開始以降、アルメニアとの間の物流が途絶えていることを認めた。

 AFP記者は、ロシア軍車両が回廊を自由に移動しているのを目撃した。一方で、ステパナケルトから約15キロの地点にあるロシアが設けた検問所付近の道路は封鎖されていた。

 道路封鎖を受け、ナゴルノには人道支援団体が物資を届けている。アルメニアの赤十字(Red Cross)の広報担当者は同日、これまでに同国政府から支給された物資10トン分を送り届けたと話した。

 アルメニア、アゼルバイジャン両国の間では、ナゴルノをめぐり1990年代と2020年に2度にわたって紛争が起きた。今年9月にも衝突があり、双方合わせて280人以上が死亡した。(c)AFP/Emil GULIYEV with Mariam HARUTYUNYAN in Yerevan