【12月26日 東方新報】中国のインターネットで人工知能(AI)を使って制作した絵画やイラストが次々と登場している。画像生成AIは新たな娯楽として盛り上がっている一方、「盗作行為ではないか」という批判や、「AIアートには著作権が発生するか」という議論が起きている。

 画像生成AIとは、キーワードを打ち込むだけでイメージに合った画像を自動生成するもので、誰でも一瞬に「神絵」を創作することができる。世界的に「ミッドジャーニー(Midjourney)」や「ステーブル・ディフュージョン(Stable Diffusion)」といったツールが広まっているほか、「中国のグーグル」と呼ばれるIT大手・百度(Baidu)が開発した「ERNIE-ViLG」が中国では人気だ。

 例えば「青い空に白い雲、広がる草原」と言った言葉を入力し、「水彩」「油彩」「アニメ風」など画風を選択すると、30秒後に6種類の絵ができあがる。同じキーワードと画風を繰り返し入力するとタッチは同じで違う絵が完成し、無数の作品を作ることができる。ERNIE-ViLGはインターネット上で公開されているデータと百度が内部で制作したデータを素材としているという。日本のネット上でも「ERNIE-ViLGは萌え系2次元キャラに強い」と話題となった。

 IT界で百度のライバル「騰訊(テンセント、Tencent)」も画像生成AI「QQ小世界(QQ World)」を開発。他にも自動生成ツールが次々と登場し、中国版インスタグラムとも呼ばれる「小紅書(Red)」や、海外でティックトック(TikTok)として知られる「抖音(Douyin)」など、人気プラットフォームで大量のAIアート作品が次々と投稿されている。

 こうしたツールの多くは無料で利用でき、人気拡大とともに問題となっているのが著作権だ。ネット上では複数の画家が「許可をしていないのに自分の作品がAIアートに使われている。盗作行為だ」と主張している。自動生成ツールによっては既存の作品を無許可で素材に使っているとみられ、特定の画家の作風がそのままAI作品に反映されてしまうケースがあるようだ。

 またSNS上では、自分で作ったAIアートを「1200元(約2万2792円)で売った」「著作権登録した」という書き込みもある。中国の著作権法では、保護されるべき作品を「文学、芸術、科学分野において独創性を有し、かつ一定の形式により表現される知的成果」(第3条)としている。著作権に詳しい弁護士の間では「原画の作者に許可なく素材として使用した場合は著作権違反にあたる」「使用する素材に問題がないとしても、自動生成された作品は、AIを開発した組織が著作権を持つ」などさまざまな意見がある。AIアートは従来の著作権の概念を超えていると言えるだけに、今後も議論が続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News