【12月25日 AFP】キンバリー・ウェストガースさん(24)は、米ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)さんのファンだった。しかし、最近の反ユダヤ的な発言に心底うんざりし、腕に彫られたウェストさんの顔のタトゥーを除去することにした。

 建築科の学生のウェストガースさんは2年前、左の二の腕に血の涙を流すウェストさんの顔を彫った。

「彼の音楽が大好きだったし、当時は人としても好きだった。双極性障害の患者を支援していて、彼が体現するものに共感していた」とAFPに話した。「崇拝していたけど、人間は変わるものだから。自分の肌から(ウェストさんを)消し去りたいと今では思っている」

 現在「イェ(Ye)」の名前で活動するウェストさんは今月、極右陰謀論者アレックス・ジョーンズ(Alex Jones)氏のウェブサイト「インフォウォーズ(InfoWars)」のライブ配信に出演。ナチス・ドイツ(Nazi)への「愛」を語り、ナチス総統アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)を賛美し、物議を醸した。

 一連の発言を受け、ツイッター(Twitter)はウェストさんのアカウントを凍結した。

 ウェストガースさんは、ウェストさんのタトゥー除去の料金を払う必要はない。英ロンドンの高級住宅街メリルボーン(Marylebone)にあるタトゥー除去を専門とする「NAAMAスタジオ(NAAMA Studios)」が無料で施術してくれるからだ。

 同スタジオは、つらい過去を思い起こさせるタトゥーの除去を無料で受けられるプログラム「セカンド・チャンス(Second Chance)」を提供している。

 対象となるタトゥーはギャング構成員の印や服役中に入れたもの、忘れたい人間関係に関するもの、ヘイトのシンボルになっているものだが、このほどウェストさんに関するタトゥーも追加された。

 ウェストガースさんは、このプログラムの下で1年にわたり12回のレーザー除去施術を受ける。

 NAAMAスタジオのオーナー、メリーナ・ローソンさんによると、ウェストさんのタトゥー除去について、ウェブサイトを通じてすでに約100件の問い合わせがあった。希望者の中から2人が選ばれ、現在施術が進められている。

 通常のタトゥーの除去費用は大きさや施術回数により異なるが、平均2000ポンド(約32万円)ほどになる。

 だが、タトゥー除去による社会的影響と、本人の自己肯定感は金額を「はるかに上回るものだ」とローソンさんは指摘する。

 ウェストガースさんは「ここ数か月ほど除去を検討していたけど、どこも高額だった」と話す。NAAMAスタジオには「感謝してもしきれない」と強調した。

 映像は12月撮影。(c)AFP/Sylvain PEUCHMAURD