【12月26日 AFP】ベトナムでは、欧米諸国での消費の減速を受け、工場労働者数万人が解雇された。「ティンバーランド(Timberland)」や「ケー・スイス(K-Swiss)」など、世界的なブランドのスニーカーや靴を10年にわたって作ってきたファン・ティ・ニエウさん(31)も、そのうちの一人だ。

 衣服や靴、家具の世界有数の輸出国であるベトナムでは、受注の減少により、50万人近くが労働時間の削減を余儀なくされている。

 ベトナム製品の主要な輸出先である欧米諸国では、物価上昇に伴い、消費者の購買力が低下している。ベトナムでこの影響を最も強く受けているのが、衣料品製造業で労働力の8割を占める女性だ。

 息子2人と夫と共に、ホーチミン(Ho Chi Minh)にある9平方メートルの部屋で暮らすニエウさんは先月初め、欧米ブランドに供給している台湾の靴メーカーから解雇を通告された。

「十分な注文が入っていない」と説明され、工場の労働者1800人のうち1200人に解雇が言い渡されたという。

 物価の高いホーチミンの平均月収は約5万円だが、ニエウさんの月収は約3万円だった。

■コロナよりも打撃大きい

 現在、わずか2か月分の解雇手当で生活していかなければならず、1日の生活費を数百円に抑える必要があり、子どもたちの食事もままならない状況だ。

 ベトナム労働総同盟によると、9月以降、衣料や靴、家具部門の外資系企業を中心に、1200社以上が解雇や労働時間の短縮に踏み切った。

 ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰し、インフレに見舞われている欧米からの注文は、米国が30〜40%、欧州が60%それぞれ減少した。
 
 労働総同盟によると、過去4か月間で47万人以上が労働時間の短縮を強いられたほか、約4万人が失業。うち3万人が35歳以上の女性だった。労働者によれば、状況は、自宅待機を余儀なくされた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時よりも厳しいという。

 米大型スーパー「ウォルマート(Walmart)」向けの衣料品を製造する韓国企業から解雇されたグエン・ティ・トムさん(35)は、「以前のような仕事を探すのは容易でない」と話す。