【12月31日 AFP】カリフォルニアの申し分のない空の下、パラサーファーのリブ・ストーン(Liv Stone)はボードを優雅にチューブの中に入れ、完璧に波に乗る。その動きを、彼女は2028年のロサンゼルスパラリンピックでもぜひ披露したいと考えている。

 3回目の優勝を目指す世界パラサーフィン選手権(World Para Surfing Championship)の会場で19歳のストーンは、4年に一度のグローバルなスポーツの祭典に出場できれば「夢がかなう」と話した。

 両腕の前腕から先がなく、手も未発達な状態で生まれたストーンは、2017年にサーフィンと恋に落ち、今はサーフィンがロスパラリンピックの実施競技として採用されれば、他の人もこのスポーツの美しさに気づくはずだと考えている。

 ストーンはAFPに対して、「自分がもっと大きな何かの一部だと感じているし、水の中では差別を感じることもない」と話し、「私と、ここで戦っているみんなに共通するのは、全員障害があること。海ではみんなが一つになった感じがするし、おかげで落ち着いた気持ちになれる」と続けた。

 サーフィンは、2021年に行われた東京五輪から正式種目になり、2024年パリ五輪でも本会場から1万6000キロも離れたタヒチ(Tahiti)で競技が実施される。パラサーフィンは、ロス大会で初めて実施される可能性があり、国際パラリンピック委員会(IPC)は来年にも判断を下すとみられている。期限のことは、ピズモビーチ(Pismo Beach)で世界選手権に出場する180人全員の頭に入っている。

 右脚がない状態で生まれた南アフリカのシミロ・ドラミニ(Similo Dlamini)は、今大会が世界選手権デビューだったが、騒々しい大軍団のサポートを受け、20分間の海との格闘を終えると、仲間たちが彼女を取り囲んでチャントや歌を歌った。

 普段は会計士として働く39歳のドラミニは、サーフィンをすることで「自分のような人間が、想像もつかなかった形で海を体験できる」と語り、「私たちがどれだけやれるか、なぜ私たちをパラリンピックの候補として検討すべきかを国際オリンピック委員会(IOC)に見せるためにも、ここに来る必要があった」と訴えた。

 大会は九つのカテゴリーに分かれているため、似た障害の選手が公平な環境で競い合える。

 片脚のサーファーは義足を使ったり、もう片方の膝と手で体を安定させたりしながらボードに乗る。まひのある選手はおなかで滑り、チームメートの助けを借りながら海へ戻っていき、目の見えない選手はパートナーの合図で波に乗り、波のうねりを感じながら取るべきラインを決めていく。

 出場者の国籍は28か国に上り、はるばるコスタリカや日本、ノルウェーからやって来た選手もいる。国際サーフィン連盟(ISA)は、こうした刺激的な集まりを開催することで、2028年ロスパラリンピックの22枠のうち一つを勝ち取ることに近づくと考えている。

 ISAでエグゼクティブディレクターを務めるロバート・ファスロ(Robert Fasulo)氏は、「パラリンピックのプログラムにとって、サーフィンは真にユニークで特徴的な何かを表せる」と話し、「私たちとしても、パラサーフィンを提案するのに適したタイミングだ」と自信を見せると、東京五輪でもサーフィンが若者に人気だったことを指摘した。

 2028年大会が、南カリフォルニアのようなサーフィンに最適の場所で開催される事実もさらなる追い風になる。ファスロ氏は「世界のサーフィンで唯一の中心ではないにしても、中心の一つとなる場所だ。だから組織委員会と開催地が、パラサーフィン採用を支持するのは自然なことだ」と話している。(c)AFP/Romain FONSEGRIVES