【12月11日 AFP】2022年ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)の授賞式が10日、ノルウェー・オスロの市庁舎で行われた。共同受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」とロシアの人権団体「メモリアル(Memorial)」の代表、ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ(Ales Bialiatski)氏(妻が代理出席)は、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の「常軌を逸した犯罪的な」ウクライナ侵攻に対して最大限の抵抗を継続するよう世界に訴えた。

 CCLとメモリアル、ビャリャツキ氏は、強権に立ち向かい「人権、民主主義、平和共存」のために取り組んできたとして、今年の平和賞に選ばれた。

 CCLのオレクサンドラ・マトイチュク(Oleksandra Matviychuk)代表は受賞演説で、「ウクライナ国民は世界中の誰よりも平和を望んでいる」「しかし、攻撃を受けている国が武器を置いても平和は得られない」と述べた。

 2007年に設立されたCCLは、ウクライナでのロシア軍の戦争犯罪疑惑を記録してきた。住宅、教会、学校、病院への砲撃、避難ルートへの爆撃、住民の強制移住、拷問など、侵攻開始からの9か月間に記録された事案は2万7000件を超える。

 マトイチュク氏は、これらは「氷山の一角にすぎない」と指摘。「戦争は人間を数字で表す。戦争犯罪の犠牲者すべての名前を取り戻さなければならない」と、こみ上げる感情を抑えながら語った。ロシアによるエネルギーインフラ攻撃で照明が使えなくなったため、演説原稿はろうそくの光の下で書いたという。

 メモリアルのヤン・ラチンスキー(Yan Rachinsky)代表は、ロシアには旧ソビエト連邦から引き継いだ「帝国主義的な野心」が「今なおまん延している」と非難。プーチン大統領とその「イデオロギーのしもべたち」は反ファシスト闘争を「自らの政治的利益のために」乗っ取り、ロシアへの抵抗を「ファシズム」と呼び、「ウクライナに対する常軌を逸した犯罪的な侵略戦争を正当化するためのイデオロギー」として利用していると糾弾した。

 1989年設立のメモリアルは、旧ソ連の独裁者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)時代の大粛清に関する調査・実証を行い、ロシアにおける人権侵害を記録してきた。ロシア政府による野党とメディアへの弾圧が強まる中、昨年末にロシア最高裁判所から解散命令を受け、平和賞受賞の発表直後に事務所を差し押さえられた。

 ビャリャツキ氏は、ベラルーシの人権団体「ビアスナ(Viasna)」の創設者。アレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領に抗議する大規模デモへの弾圧の一環で昨年7月に拘束され、裁判が行われないまま勾留されている。

 受賞演説の公開も認められなかったため、妻のナタリア・ピンチュク(Natalia Pinchuk)氏が代理で賞を受け取り、「独裁の国際化」など、以前に録音されたビャリャツキ氏の見解を紹介した。(c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES