【12月6日 AFP】中国政府の統制下に置かれている国営メディアはこれまで、新型コロナウイルスの危険性や海外での感染拡大による混乱ぶりを伝える悲観的な報道に徹してきたが、同国が「ゼロコロナ」政策に基づく厳しい行動規制の緩和に動く中、論調を大きく変えている。

 中国では長期にわたり、感染拡大の抑制に向けて大規模なロックダウン(都市封鎖)や指定施設での強制隔離、数百万人規模の集団検査といった強硬策が実施されてきた。だがここにきて、ロックダウンの終了と政治的自由の拡大を求める抗議行動が全国に広がったのを受け、政府は規制緩和へとかじを切った。

 それに伴い、国営通信社や政府発表での新型ウイルスをめぐる論調も一変。危険性を強調する姿勢を後退させる一方で、地方当局によるロックダウンの過剰実施を非難するようになった。

 中国共産党の機関紙・中国青年報(China Youth Daily)は、現在流行しているオミクロン株は昨年流行したデルタ株とは全く異なっており、「オミクロン株に感染しても大多数は無症状か軽症で、重症化する人は非常に少ない。これはすでに広く知られていることだ」とする広州(Guangzhou)の大学病院に勤める崇雨田(Chong Yutian)教授の談話を掲載した。

 国営紙・北京青年報(Beijing Youth Daily)は、「過度に恐れる必要はない。ただし予防策は講じるように」との、回復した感染者から読者へのアドバイスを紹介した。

 また、共産党の機関紙・人民日報(People's Daily)は2日の記事で、これまで認められていなかった、感染者の自宅隔離を許可した地方当局の決定について、公衆衛生専門家は支持していると報じた。

 香港を拠点にする政治アナリストのウィリー・ラム(Willy Lam)氏はAFPに対し、こうした論調の変化について「国民に対してはさらなる規制緩和への心構えを、政府に対しては(ゼロコロナ政策からの)脱却の余地を持たせるための、一種の官製プロパガンダだ」と分析した。

■地方当局に責任転嫁

 専門家によれば、政府は現在、一段のコロナ規制緩和に向け地ならしを進めており、行き過ぎた規制を敷いてきたことの責任を転嫁しようともしている。

 コロナ対策を担当する機関は3日、人民日報に掲載された記事の中で、過剰な対策を実施した地方当局の「責任を厳しく追及」するよう訴えた。ラム氏は「多くの地方当局者が処罰されるだろう」と語っている。

 ウイルス検査機関も責任転嫁の矛先として浮上している。国営通信各社はここ数日、検査機関による規則違反の疑いを相次いで報じた。

 各地の地方当局は先週、これまで全員に義務付けていた集団検査の対象縮小を発表。高齢者や、外出を全くしない人は検査を受ける必要がなくなった。

 規制がわずかに緩和された形だが、国営通信社は規制の変更を繰り返し報道。新華社(Xinhua)通信は「政府が国民の要求に応えている」ことの証しだと評した。(c)AFP/Jing Xuan TENG