【12月5日 AFP】南米ボリビアでかつて2番目に大きな湖だったポオポ湖(Lake Poopo)は、豊かな自然の恵みに育まれた何世紀にもわたる文化とともにほとんど消失してしまった。

 先住民ウル(Uru)の元漁師、フェリックス・マウリシオさん(82)は、不毛な風景を眺めながら、コカの葉をかんで空腹をしのいでいる。

「ここは湖だったのに…」。AFPの取材に応じたマウリシオさんは干上がった湖底にひざまずき、昔を懐かしむような表情で、自分で彫った木製のミニチュアボートを押した。

 1986年のピーク時の湖の面積は約3500平方キロ。英グレーターロンドン(大ロンドン、Greater London)の2倍以上あった。 しかし、2015年末に欧州宇宙機関(ESA)が撮影した衛星写真では「完全に蒸発」してしまっていた。

 湖の消失には気候変動の他、標高約3700メートルのボリビア高原における農業や鉱業による水利用など、さまざまな要因が絡み合っているとされる。

 ウルのコミュニティーはボリビアとペルーで数千年の歴史を持つが、2013年の調査では、周辺の集落合わせて約600人しか残っていなかった。マウリシオさんが住む村プニャカティンタマリア(Punaca Tinta Maria)にはかつて84世帯が暮らしていたが、残っているのはわずか7世帯だ。

 魚や水鳥を捕らえて生活してきたウルの人々は、今なお「水の民」を自称している。

「湖が干上がるなんて誰が思ったでしょうか? 私たちの親世代はポオポ湖を頼って生活していました。魚も鳥も卵も、何でもある湖でした。私たちの命の源でした」。この地域一帯のウルの人々の精神的リーダー、ルイス・バレロさん(38)は嘆いた。

 一家が住む泥でできた小屋の外では5人の子どもたちが、使い道のなくなったカヌーの周りで追いかけっこをしている。「私たちは寄る辺を失ったのです」

 映像は10月に撮影。(c)AFP/Martín SILVA