【12月11日 AFP】サッカーW杯カタール大会(2022 World Cup)に乗じ、カタール各地では期間中に同国を訪れると予想される100万人以上のサッカーファンに対し、イスラム教への偏見をなくそうとする取り組みが行われている。イスラム教国でのサッカーのW杯開催は今回が初。

 首都ドーハのカタラ(Katara)文化村。青と紫の見事なモザイク画で知られるオスマン帝国様式のモスク(イスラム礼拝所)では、カナダ人夫婦がガイドに案内されながら礼拝の呼び掛けに耳を傾けていた。イスラム文化に接するのは初めてだと言い、自分とは違う文化や人々への偏見が生まれるのは、異文化圏との触れ合いがないからだと意見を述べた。

 このモスクを管理しているカタール・ゲスト・センター(Qatar Guest Center)は、W杯に合わせて世界中から数十人の説教師を招聘(しょうへい)した。

 モスクの外には、イスラム教や預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)について説明した多言語の冊子やアラビアコーヒー、デーツなどが置かれている。

 シリア人のボランティアは、W杯は「大勢の人にイスラム教を知ってもらい」、欧米で過激派と結び付けられることも多いイスラム教の「誤解」を解くチャンスでもあると説明。「私たちは(イスラム教が説く)道徳観や家族の絆、隣人やイスラム教徒以外の人々に敬意を払うことの大切さについて説明しています」と付け加えた。

 モスクの近くでも「カタールについての質問にお答えします」という看板を掲げたボランティアが、立ち寄った人にアラビアコーヒーを振る舞っている。イスラム教に関して説明する5分間の仮想現実(VR)動画を見るコーナーもある。

 パレスチナ人のボランティアによると、よく受ける質問は女性がヒジャブやブルカで顔や体を覆う習慣についてや一夫多妻制、イスラム教国で女性は虐げられているかどうかなどについてだという。

 W杯を機に、カタールの女性やLGBTQ(性的少数者)の人権侵害に関心が集まっている。

 一方、サッカーファンをイスラム教に改宗させる取り組みを呼び掛けるイスラム教指導者もいる。

 カタール大学(Qatar University)でシャリア(イスラム法)を教えているスルタン・ビン・イブラヒム・アル・ハシェミ(Sultan bin Ibrahim Al Hashemi)教授は、W杯はイスラム嫌悪の解消だけでなく、勧誘にも利用するべきだと主張する。

 ハシェミ氏はAFPに対し、「機会があれば、(外国人のサッカーファンに)礼節をもってイスラム教を勧める。機会がなければ、あなた方は客人であり兄弟だと伝える」とし、イスラム教は強制的な改宗は認めていないと強調した。

 ソーシャルメディアには、カタールを訪れたサッカーファン数百人がイスラム教に改宗したという投稿もみられるが、AFPの調査によるとこれは偽情報だった。

 家族でカタールに滞在しているクロアチア人男性(21)は「イスラム教のことを知るいい機会です」と話す一方で、「サッカーの大会中に自分の宗教を変える人はいませんよ」と続けた。(c)AFP/Haitham El-Tabei and Paul Maroudis