【12月6日 People’s Daily】中国南部の貴州省(Guizhou)にある電波望遠鏡「中国天眼(FAST)」が、これまでに宇宙で観測された中で最大の原子ガス構造を発見した。有名な銀河群「ステファンの五つ子」周辺を観測し、銀河系の約20倍の大きさとなる200万光年の原子ガス構造を見つけた。その成果は10月19日、国際科学誌「ネイチャー」に掲載された。

 宇宙のすべての天体の起源は原子ガスと切り離すことはできない。銀河および銀河間のガス源の相互作用は天文学において重要な問題であり、「中国天眼」は問題を究明するための大きな武器となっている。

 直径500メートルの「中国天眼」は世界で最大かつ最も感度の高い単一口径の球面電波望遠鏡。その超高感度により、遠く離れていて非常に薄く分散した原子ガスから放出される微弱な放射線を検出できる。2016年9月に完成して以来、多くの成果を生み出しきた。昨年3月31日には全世界に開放され、世界中の天文学者が観測を申し込んでいる。

 今回、中国科学院国立天文台の研究者である徐聡(Xu Cong)氏が率いる国際チームには、国内外の第一線の赤外線および電波天文学の専門家が参加。「中国天眼」の調整を続けて2021年10月には感度を限界まで上げ、ステファンの五つ子銀河の非常に薄いガスを観測することに成功した。調査メンバーの1人で、中国科学院国立天文台の研究者である程誠(Cheng Cheng)氏は「われわれの予想を超えた非常に速い成果」と喜びの声を上げる。

 遠く離れた宇宙空間に大規模かつ低密度の原子ガス構造が発見されたことについて、徐聡氏は「この発見は、宇宙における銀河とガスの進化の研究に挑戦をもたらした。既存の理論では、どうしてこれほど長い期間、希薄な原子ガスが宇宙の紫外線背景輻射(ふくしゃ)によってイオン化されないのかを説明することは困難だからです」と説明する。

「中国天眼」により、天体の起源を研究するための新たな窓が開かれた。今後はさらに、紫外線背景輻射の電離に関する探査を行う。「中国天眼」を通じて、中国と世界の科学者が力を合わせて広大な宇宙を探索していく。(c)People’s Daily/AFPBB News