■「任務はウクライナ軍の破壊」

 だがロシア側の目標は、バフムートの占領にとどまらないようだ。

 戦闘に参加しているロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)の創設者で、ロシア政府指導部と関係を持つ実業家エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏は、経営する別企業コンコルド(Concord)を通じ出した声明で、ワグネルの部隊は主にウクライナ軍の破壊に注力していると説明した。

「われわれの任務はバフムートそのものではなく、ウクライナ軍を破壊し、戦闘力を低下させることだ。それは他の分野に極めて良い影響を与える。こうした理由で、この作戦は『バフムートの肉ひき機』と呼ばれるようになった」

 前線からの負傷者の多くはまず、バフムートの中央病院に搬送される。病院周辺では、迫撃砲や多連装ロケット砲BM21「グラート(Grad)」の砲撃の音や、近くを走行する戦車の振動が響き渡る。AFPが訪れた際には、血に染まった担架が壁に立てかけられ、少なくとも2個の黒い遺体袋が置かれていた。

 休憩時間にAFPの取材に応じた麻酔科医のマリアナさん(30)は、ソビエト時代の軍事用語を使いながら、「どんな医師にとっても一番つらいことは、300(負傷者)が200(死者)になることだ」と語った。「私たちの士気は高いが、1回の勤務で多くの負傷者を受け入れると、体力的にきつい。帰宅すると、空腹なのに疲れ果てていて食べられない」