【12月1日 AFP】訪米中のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は11月30日、米連邦議会議員や財界関係者に招待された昼食会で、米政府の産業補助金は競合するフランスの企業に対して「極めて攻撃的だ」と率直な批判を展開した。AFP記者が発言を聞いた。

 マクロン氏が言及したのは、ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領が成立させた代表的政策である「インフレ抑制法(%%Inflation Reduction Act%)」に盛り込まれた補助金措置。クリーンエネルギー関連事業に多額の資金を投じ、米国内の製造業を強力に後押しする内容だ。

 ホワイトハウス(White House)は同法について、米製造業を活性化し、再生可能技術を促進する画期的な取り組みだと自賛するが、欧州連合(EU)各国政府は反発し、自国でもグリーン経済部門に補助金を出して貿易戦争を始めると脅しをかけている。

 マクロン氏は、「良き友好国として敬意を払ってもらいたいだけだ」「米国製品を売るための市場にはなりたくない。わが国にも全く同じ製品がある」などと訴え、自国にも雇用を必要とする中間層が存在すると強調。「インフレ抑制法の結果、(米国の)皆さんの問題は解決するだろうが、われわれの問題は大きくなる。率直な物言いで申し訳ない」と続けた。

 ホワイトハウスはこれに対し、国賓訪問は米仏大統領の「温かい関係」に関するものだと主張した。

 カリーヌ・ジャンピエール(Karine Jean-Pierre)米大統領報道官は 、クリーンエネルギー経済における米国の発展は欧州の人々にも役立つと説明。インフレ抑制法は「EUのエネルギー安全保障に利益をもたらし、欧州企業にも大きな機会を提供する。これはゼロサムゲームではない」と述べた。

 マクロン氏はその後、仏大使館での演説でも補助金問題に再度言及。欧米関係の障害になりかねないとして、インフレ抑制法が掲げる環境目標については支持を表明しながらも、「欧米を分裂させる選択だ」と懸念を示した。

 一方で、米仏の関係は依然として強固だとし、両国が「歴史の中で築き上げてきた絆や、何よりも強い同盟」に留意するべきだと訴えた。(c)AFP/Camille Camdessus and Sebastian Smith