【12月3日 AFP】マングローブ林があるエジプトの紅海(Red Sea)沿岸を魚が泳いでいる。ここハマタ(Hamata)では生物多様性の回復と沿岸の保全、気候変動対策の一環としてマングローブの再植林が行われている。

 数十年間に及ぶ環境破壊でマングローブ林は姿を消し、残ったのは計5平方キロの面積しかない。

 マングローブ再植林を率いる農業組合の役員サイード・ハリファさんは「生態系全体の問題です」と語る。「マングローブを植えれば、海洋生物や甲殻類、鳥なども集まってきます」

 年間約5万ドル(約710万円)の助成金が政府から支給される取り組みは、5年前に始まった。栽培している数万本の苗木を、紅海とシナイ半島(Sinai Peninsula)沿岸の重点地域6か所、約2.1平方キロ相当に再植林する。

 マングローブは気候変動との闘いで大きな力を発揮する。国連環境計画(UNEP)によると、回復力が強い上、二酸化炭素の吸収量は陸上の森林の5倍に上る。

 またマングローブ林は水質汚染を改善する他、海面上昇や異常気象に対して自然の障壁となり、壊滅的な暴風雨から沿岸部を守る。UNEPの試算によると、マングローブ林の保護にかかるコストは、同じ長さの防波堤建設費の1000分の1で済む。

 これだけの価値があるにもかかわらず、世界全体で3分の1を超えるマングローブが消失したという研究結果もあり、インド洋沿岸では最大80%が失われた地域もある。

 エジプト・タンタ大学(Tanta University)の植物学者カマル・シャルタウト(Kamal Shaltout)教授は同国の場合、大規模な観光事業とリゾート開発が汚染を引き起こしたと指摘。ボートでの回遊や石油掘削もマングローブに大きな被害を与えるとしている。

 こうした問題点を改善しない限り、マングローブ林再生の取り組みは「無駄になる」と同氏は警告した。

 映像は9月に撮影。(c)AFP/Bahira AMIN