■エイズの被害さえなければ

 孤児の中には、身分証明書の取得さえままならない人もいる。

 ヨハネスブルクでエイズ孤児のためのシェルターを運営するノンランラ・マザレニ(Nonhlanhla Mazaleni)氏は、支援する若者のうち21人は身分証を持っていないと話した。2歳で保護され、現在24歳の男性は耳が聞こえず、無職だが、身分証がないため障害者給付金の申請もできない。

 ガメデさんは、一児の父となった。「自宅」と呼ぶ薄暗いガレージで、自身のミュージックビデオが流れるモニターを誇らしげに眺め、ビートに合わせて首を振りながら歌う。床にはウレタンマットが敷かれ、ベビーベッドが置かれている。

 ラップ音楽に安らぎを求めつつ仕事を探しているが、勉強を続けられなかったため困難に直面している。HIV/エイズ孤児の若者グループを主催したり、セラピーの一環としてガーデニング教室を主催したりしているが、生活は苦しい。

 もしもエイズで家族が崩壊していなかったなら、と考える。「機会は簡単に手に入っただろう。人生はこんなものではなかったはずだ」とガメデさんは言った。(c)AFP/Zama LUTHULI