【12月10日 AFP】サッカーW杯の開催国カタールで同性愛が違法とされていることに対し、欧米諸国の選手やファンは抗議を表明している。だが、中東諸国のLGBTQ(性的少数者)のコミュニティーの間では、そのことでかえって同性愛嫌悪が強まるなどの新たなリスクが生まれかねないと懸念する声が上がっている。

 欧州7チームのキャプテンはW杯で、性的少数者の権利を訴える虹色の腕章の着用を予定していたが、国際サッカー連盟(FIFA)から処分の可能性を警告され、断念した。

 隣国バーレーン出身の起業家(32)は匿名で取材に応じ、LGBTQの権利を訴える善意の行動が一部の人々には不安材料になっているとして、「隠れるように生きるのも良いことではありませんが、スポットライトが当たるのも良いことではありません」と語った。

「W杯が終わり、FIFAが去った後に憎悪が残ります」

■欧米の運動で「台無しにされている」

 カタール以外でも、イスラム教徒が多数派を占める地域では、LGBTQの権利を求める欧米の取り組みが思わぬ反発を招いている。

 米国大使館は今年、世界プライド月間に合わせてバーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)で虹色の旗を掲げ、性的少数者に連帯するメッセージをソーシャルメディアに投稿した。

 目立たずに生活することを好む同性愛者が多い中東地域で、こうしたアクションは反発を招いたと前述の起業家の男性は指摘。中東の同性愛者にとっては、欧米の運動によってさまざまなことが「台無しにされている」と批判した。

「私は必ずしも自分が何者であるかを隠しているわけではありませんが、かといって虹色の旗を掲げて歩いているわけでもありません」

 この夏、湾岸諸国では同性愛を奨励する試みと判断されたものが取り締まりの対象となり、同性愛に死刑を科しているサウジアラビア当局は商店から虹色のおもちゃや衣類を押収した。