【12月1日 Xinhua News】20世紀前半に日本人の書店主、内山完造が中国上海市に開いた内山書店の旧跡で11月26日、新たな書店「1927・魯迅内山記念書局」がオープンした。数十年にわたり受け継がれた旧跡保存活動と1年近くの入念な修復と機能拡張を経ての開店で、当時の面影を色濃く残している。

 上海内山書店は1920~30年代、中国の文豪、魯迅(ろじん)と内山完造の深い友情と、中国左翼文学の隆盛を見守ってきた。内山夫妻が虹口地区に書店を開いたのは1917年。1927年秋に魯迅と妻の許広平(きょ・こうへい)が同地区に居を構えると、両者の隣人同士、書店の店主と常連客としての切っても切れない関係が始まった。内山書店は当時、上海の進歩的な知識人と学生が世界の文化の潮流を知る窓口の一つだった。

 虹口区四川北路2050号にあった書店は、1945年に閉鎖されたが、改革開放後に跡地が上海市文物保護単位(重要文化材に相当)に指定された。書店跡は当時、倉庫になっていたが、関係者は旧跡のプレート掲げ、陳列室を開設するなど、魯迅と内山の友情の歴史の保存に努めた。そして、いつしか同地は中日両国の民間友好のシンボルとなった。2021年には「上海市第一次革命文物リスト」にも選出された。

 書店の修復・拡張プロジェクトは虹口区が主導し、同市の出版・メディア企業、上海新華伝媒連鎖が従来の書店の店構えを復元した。内部は3階構造に拡張され、800平方メートル余りの都市型文化複合施設へと生まれ変わった。

 新書店の1階には魯迅と内山書店の記念展が特設され、魯迅の書籍リストなど貴重な文化財のレプリカや同書店の歴史を紹介するパネルが展示されている。書籍売り場は主に1階と2階で、喫茶スペースや自習スペース、フラワーアレンジメントスペースなども設置されている。3階は臨時展示スペースとなっている。

 内山完造の子孫は、これまでも内山書店の跡地を度々訪れており、幾つかの中日友好団体も毎年、書店跡地とそれに隣接する上海魯迅記念館で友好交流活動を行っている。魯迅の孫、周令飛(しゅう・れいひ)さんは新書店のオープンに際し「上海内山書店は祖父と内山氏の友情だけでなく、中日両国の民間友好交流の多くの忘れがたい場面も見守ってきたと」と祝賀の言葉を述べ、旧書店跡地にできた新書店が中日友好の新たな文化的シンボルになることに期待を示した。

 書店1階には、旧書店跡の陳列室に置かれていたゲストブックが展示されるなど、内部設計の細かな部分に中日友好交流の印が残されている。メッセージの多くは日本の対中友好団体や個人のものだという。同じく1階のフラワーアレンジメントスペースでは盆栽が販売されており、日本風の華道作品もある。

 新書店プロジェクトの設計を手掛けた沈暁明(しん・ぎょうめい)氏によると、各階の機能配置では中国文学と日本文学の「対話」を際立たせており、2階には専門コーナーも設けている。店内の案内表示には日本語と英語も併記し、海外からの観光客にも配慮したという。(c)Xinhua News/AFPBB News