【12月1日 AFP】ウクライナ東部では、厳寒とロシア軍との砲撃戦の中で状況はこう着している。それでもウクライナ軍はわずかずつ進撃を続けている。戦車の射手「バイキング」さん(26)にとって、戦い続ける動機は一つしかない。それは、友人たちを殺されたことへの復讐(ふくしゅう)だ。

「私にとって最もつらかったのは友人たちの死だ。もともと戦う意思はあったが、怒りや敵意、憎しみのためにその気持ちは強まった」

 ロシアが2月に侵攻を開始して以来9か月に及ぶ戦闘で、ウクライナ軍は大きな犠牲を強いられた。しかし、戦車小隊に属するバイキングさんや戦友たちは、勝利を疑っていない。

「ロシア軍を国境まで、そしてさらにその向こうまで押し戻すんだ」と、バイキングさんは笑いながら言った。

 ウクライナ軍は9月、東部のロシア支配地域を奪還し、ロシア軍をハルキウ(Kharkiv)州のオスキル(Oskil)川東岸まで敗走させた。バイキングさんの小隊はその時の作戦に参加していた。

 ロシア軍が防衛ラインを立て直したのに伴い、ウクライナ軍の反転攻勢の勢いは鈍った。だが、ウクライナ側の説明によれば、寒さが増す中、道路状況の悪化で補給に支障を来したり、荒天のため戦闘に影響が出たりしても、攻勢は続いている。

 バイキングさんと同じ小隊に属する「パトリオット」 さん(23)は「ロシア人を押し戻し、陣地を築きながら、少しずつ前進している」と語った。

■激しい砲撃

 ウクライナ軍が企画した前線視察ツアーに参加したAFPに対し、パトリオットさんは「砲撃はすさまじい。先月には100〜200回の着弾音を耳にした」と振り返った。

 前線に展開してから9か月が経過する中、小隊の装備にも今回の戦争の大局的な流れが反映されるようになった。現在運用中の戦車のうち、1両はウクライナ軍の装備だが、別の1両はロシア軍から鹵獲(ろかく)、もう1両はポーランドから提供されたものだ。

 戦闘継続に必要な弾薬の一部は、ロシア軍が残していったものだ。「ロシアからの武器貸与だ」との冗談も隊員からは飛び出す。

 小隊は、ロシア軍に占領されている東部のセベロドネツク(Severodonetsk)とリシチャンスク(Lysychansk)への主要な補給路となっている幹線道路の奪還作戦の一角を担っている。

 この二つの都市は、今夏の東部ドンバス(Donbas)地方でのロシア軍による猛攻の末、制圧された。その際の戦闘では、両軍とも多数の犠牲者を出したとみられている。