【12月30日 AFP】南アフリカの首都プレトリア。日没直後の廃虚でリバス・ブライトさん(39)は懐中電灯を手に、割れている窓を2回ノックした。仲間のゴーストハンターと共に息を潜め、物陰からの反応を待つ。

 幽霊が実在することを証明するために、ブライトさんは約2年前、超常現象を追跡するグループ「アップサイドダウン(The Upsidedown)」を立ち上げた。現在のメンバーは男性5人、女性2人の計7人。全員白人だ。赤外線カメラや動体検知センサー、サーモグラフィー(熱検知)カメラ、無線機、そして独自に開発したアプリなどのハイテク機器を武器に、幽霊が出るという建物を探索する。

 今夜は、南アフリカ最大級の大学構内にある廃虚ビルにやって来た。

 警備員のルーシー・ツォウさん(46)によれば、夜中にドアが音を立てて閉まったり、タイプライターが音を立てたりするという。同僚のムポ・ムソンベニさん(30)は、誰もいないのにトイレの水が流れ、妙な気配を感じると話した。 不安と期待が入り交じった様子で、ゴーストハンターの捜索によってそうした現象が「収まるかもしれない」と語った。

■ささやく声と銃声

 グループは発足以来、ソーシャルメディアで数千人のフォロワーを集め、数千ドルを機材に費やし、地元住民からの情報提供に基づいて十数か所の建物を探索してきた。

 大学の廃虚ビルでは、枯れ葉が積もった床に探知機を置いて全室をチェックした。 「暗闇の中で、点滅する赤と緑の光を追いながら質問していくんです」とブライトさん。ベルを鳴らして霊に呼び掛けるが、返事はない。

「私たちがここにいるのは、誰かを傷つけたり、あなたを追い出したりするためではありません。私たちは答えを求めているのです」

 遠くで銃声が響く。プレトリアは世界有数の危険な首都とされている。

「聞こえた? 誰かがはっきり私の名前を呼ぶ声がした」とメンバーの一人。他のメンバーからも何かが動くのを感じた、ため息が聞こえたといった声が上がった。だが、裏付けを取るのは難しい。

 グループは、少し前にもこのビルを一度訪れていた。その時は、1980年代に激化した反アパルトヘイト(人種隔離)闘争のさなかに遺体安置所として使われていた一室で、子どもたちの霊と交信したという。

 メンバーの一人は目隠しをして無線を聴きながら、再び霊との接触を図る。証拠となりそうなあらゆる物を撮影したが、決定打はなかった。

「僕たちがクレイジーだと思われている理由は分かります」とブライトさん。「でも、説明のつかない大きな証拠をつかんだら、誰もクレイジーなんて言えなくなりますよ」と続けた。(c)AFP/Claire DOYEN