【11月23日 AFP】同性愛が違法とされるカタールで開催中のサッカーW杯(2022 World Cup)で、虹色のロゴ入り衣類の着用をめぐる主催者側の対応に批判が集まっている。

 今大会はアラブ世界初のW杯となった。開幕前日、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)会長は記者会見で、性的少数者への支持を表明し、「いかなる人も歓迎する」と発言していた。だが、カタールの大会組織委員会のこれまでの対応からは、LGBTなど性的少数者を象徴する虹色のシンボルへの強い不快感がうかがえる。

 イングランドやドイツを含む欧州の7チームは数か月前から、今大会で各チームのキャプテンが虹色の腕章を着けることを計画していた。しかし、大会2日目の21日、FIFAから「スポーツ制裁」を科すとの警告を受けたことから、着用断念に追い込まれた。

 これに対し、ドイツサッカー連盟(DFB)は、FIFAの警告について法的措置を検討すると表明。同連盟の広報担当者はAFP傘下の独スポーツ通信社SIDに対し、「FIFAは、われわれが多様性と人権を訴えるサインを見せることを禁止した。同時に、具体的な処分内容を示すことなく、『スポーツ制裁』という強い脅しをかけてきた」と語り、警告の合法性をめぐり確認中であることを明らかにした。

 虹色シンボルを禁止されたのは選手にとどまらない。各会場では観客が警備員から、虹色のロゴ入り衣類を脱ぐよう指示された。

 実際、ウェールズ女子代表チームの元キャプテンであるローラ・マカリスター(Laura McAllister)氏は21日に行われた米国対ウェールズ戦で、警備員から虹色の帽子を取るよう命じられた。

 マカリスター氏が英民放ITVに語ったところによると、同氏はFIFAがこの大会でLGBTの権利支持を繰り返し表明していることを指摘し、「平等について積極的に取り組んでいる国から来た自分としては帽子を脱ぐつもりはない」と伝えたが、警備員は、その場合入場はできないとして譲らなかった。結局、帽子をかばんの中に忍ばせることで入場できたという。

 ウェールズサッカー協会(FAW)によると、性的少数者のウェールズサポーター団体「レインボー・ウォール(Rainbow Wall)」のメンバー数人も、帽子の着用を禁じられた。同協会は「非常に失望」したとし、FIFAにこの問題を提起する方針を示している。

 同じ試合で、米国人記者のグラント・ウォール(Grant Wahl)氏も、虹色のロゴの入ったTシャツを脱ぐよう指示されたことをツイッター(Twitter)への投稿で明らかにしている。25分ほど拘束されたが、最終的には入場を許されたという。

 AFPはウェールズのサポーターが受けた対応についてFIFAに問い合わせたが、回答は得られていない。(c)AFP/Coralie FEBVRE, Guy JACKSON