【11月20日 AFP】不動産業界で働く黄さん(28、仮名)は、これまで何の気苦労もなく快適な暮らしを送ってきたが、今は借金に悩まされている。人身取引の被害者にオンライン詐欺の片棒を担がせる国際犯罪集団の手口に引っかかったのだ。

 中国では、恋愛相手を装った詐欺師に大金をだまし取られる被害が相次いでいる。数週間かけて親交を深めた後で、偽の投資プラットフォームなどの計略に誘い込み、多額の金を引き出す手口は「殺豚盤(豚殺し)」と呼ばれる。東南アジアの犯罪組織が、中国人をはじめとする外国人を誘拐し、同国人を詐欺にかけるよう強要しているとみられている。

■「まさに私のタイプ」

 詐欺被害に遭ったことを友人や家族に知られたくないと、匿名でAFPの取材に応じた黄さん。トラブルの発端は昨年、中国の人気求人サイトで履歴書を公開したことだった。

 林と名乗る採用担当者から連絡を受けた。趣味が合い、インターネットを介した2人の関係は恋愛に発展した。「まさに私のタイプだった」

 子どもの頃に親に捨てられ、貧困からはい上がってきたという入念に練り上げられた林の生い立ちに、黄さんは「共感と同情を覚えた」と語る。

 直接会う機会はなかったが、林はビデオ通話を重ね、自分の身分証明書だとするスクリーンショットを送るなどして、黄さんの信頼を得た。

 林の勧めに従い、黄さんはまず5万元(約98万円)を偽の投資プラットフォームに投資した。しかし、黄さんが投資への興味を失うと、林は手を変えてきた。