【11月17日 東方新報】中国・湖南省(Hunan)の都市、岳陽市(Yueyang)にある団地の部屋を中古で買った張(Zhang)さんは、いざ入居しようとした時に、管理会社から2万元(約39万円)以上の支払いを請求された。理由は、以前の所有者が約3年前から、管理費や水道代を払っていなかったからだという。

 張さんからすれば言われのない請求。払う気はない。すると管理会社に、新居の水道を止められてしまった。張さんは仕方なくホテルに引っ越し、管理会社を訴えた。

 裁判所は、以前の所有者の滞納分を張さんが払う必要はないとして、断水などで張さんに与えた経済的損失1200元(約2万3590円)を払うよう管理会社に命じた。

 中国の団地で住民と管理会社との間のトラブルが増えている。張さんのような裁判沙汰になる例も少なくない。

 中でも住民が管理会社のサービスに不満を抱き、管理費の支払いを拒むというトラブルが多い。ゴミ捨て場が清掃されていなかったり、エレベーターが度々故障したり、故障してもなかなか修理されなかったりなど、住民側の不満もうなずける。管理会社からすれば人件費の高騰など辛い事情があるようだが、ある管理会社が毎日、建物の下でラッパを吹き鳴らし、住民に管理費の支払いを催促した、というのはやりすぎだろう。

 不動産管理に詳しい北京市の弁護士、包華(Bao Hua)氏によれば、管理会社のサービスに問題があった場合、会社はサービスの改善に努力する責任を負うが、だからと言って住民が管理費を払わなくてよい理由にはならないという。同時に、住民が管理費を払わないからと言って、水や電気を止める権利は管理会社にはないとも指摘する。だが、現実には冒頭の張さんの例のように、管理会社が立場を利用した手荒な手段に出ることはよくある。

 サービスの質のみならず、管理会社の多くが団地の管理に関わる帳簿をきちんと公開していない実情も問題視されている。なぜなら団地の共有部分を利用して得られる収入、例えばエレベーター内の広告スペースの提供料や、敷地内にある自動販売機の賃料として得られる収入の行方が謎だからだ。それらの収入は、法律上は管理会社と住民とで折半されるはずだが、実際には管理会社の“闇収入”になっている可能性が高い。

 この点について、ある専門家は「単なる帳簿の透明性だけの問題にはとどまらず、当局による規制や法律の改善が必要だ」と指摘する。

 管理会社との深刻なトラブルに直面した場合、住民たちには、「管理会社を替える」という選択肢があるにはあるが、現実はなかなか容易ではない。

 管理会社を替えるには、住民委員会で投票を行い住民たちの同意を得る必要がある。だが住民たちの関心度に違いがあって、なかなか意見がまとまらないのは日本でもよくある事情。また、元々の管理会社が居座ることもあれば、積み残された問題が多すぎて新しい会社が業務を引き受けたがらないこともある。

 中国では人々の権利意識が年々高まっている。「持てるものが強い」という発想を長く許容してきた社会に変化が不可欠なことは、こんな事情にも表れている。(c)東方新報/AFPBB News