■異なるスタンスを取る店も

 ベルリンの別のバー「タンテ・ケーテ」のように、試合の映像を流しはするが、大会が生んだ露出増の機会を利用して、カタールの人権侵害に光を当てようとする店もある。例えばこの店では、スタジアム建設のためネパールから出稼ぎに来た労働者の劣悪な住環境を示した写真を壁に掛ける。

 一方で、試合を見せることを宣言する店もある。

 ファーゴから角を一つ曲がったところにあるバー「サラマズ」の支配人で、店長でもあるサラマ・エルハティブさんは、観戦したいのなら「誰にでも自分で判断する権利がある」と話し、「私は全試合を流す。オープンの午前11時から午後8時まで、例外なくだ」と続けた。

 1980年代に学業のため中東からベルリンへ来て、1996年に自身の名を冠したバーを開いたエルハティブさんは、客との間で「(カタールの)人権の問題はよく話し合った」が、ボイコットは検討しなかった。「5、6人の常連」は大会を避けるが、「他の客は来る」という。

「(今起きている)議論は遅すぎたと思う。4年前にやるべきだった。(大会の)2週間前にボイコットを話し合っても意味がない。もっと前にやらなくてはならなかった」とエルハティブさんは語った。(c)AFP/Daniel WIGHTON