【11月16日 AFP】国連(UN)ウクライナ人権監視団は15日、ロシアのウクライナ侵攻で、両国がそれぞれ拘束した捕虜に対し、殴打、電気ショック、裸での屈辱的な扱いなどの拷問を行っているとする調査結果を発表した。

 同監視団のマチルダ・ボグナー(Matilda Bogner)団長は、ウクライナの首都キーウからビデオ会議を通じスイス・ジュネーブで開いた記者会見で、国際法の下では紛争下であっても拷問や虐待は禁止されていると強調。ロシアによる捕虜虐待はウクライナよりも「組織的」ではあるものの、双方ともこの原則を完全に守っていないもようだと指摘した。

 2014年からウクライナに派遣されている同監視団はここ数か月間で、ロシア軍が拘束した捕虜159人(うち139人が男性)と、ウクライナ軍が拘束した捕虜175人(全員男性)に聞き取りを行った。ウクライナは拘束中の捕虜との面会を許可したが、ロシアは許可しなかったため、ウクライナ人捕虜に対する聞き取りは解放後に行った。

 ボグナー氏によると、ロシアに拘束されたウクライナ人捕虜の「大多数」が拷問や虐待を受けていた。一部は拘束後すぐに暴行を受けたとされる。多くは過密状態の車両で移送され、1日以上にわたり水を与えられず、トイレも使えなかったという。

 捕虜は収容所に到着すると、入所時の通過儀礼として殴打を受けたり、犬をけしかけられたり、裸にされ体に負荷のかかる姿勢を取らされたりしたという。ウクライナ東部オレニフカ(Olenivka)近郊の収容所では4月、こうした入所時の暴行で少なくとも1人の捕虜が死亡したとの証言もあった。同じ収容所では同月、さらに8人が死亡したとの情報があり、調査が行われているという。

 捕虜の大半は収容所で、情報を引き出すためだけでなく「威嚇や屈辱を与える目的で」拷問を受けたと話している。

 ボグナー氏は、ウクライナによるロシア人捕虜の虐待は「組織的なものではなかった」と説明。拘束時と移送時に虐待が行われる場合が多かったが、収容所に入ってからの扱いはおおむね適切だったと述べた。

 他方で監視団は、拷問や虐待が行われていたウクライナの収容所3か所を特定した。ロシア人捕虜は、投降後や尋問中に顔などを殴られたり蹴られたりしたと証言。刃物で刺されたり、軍用電話を使って電気ショックを与えられたりした捕虜もいた。最も深刻な疑惑として、「戦闘不能者の即決処刑に関する信ぴょう性のある告発」もあったという。(c)AFP