【11月15日 東方新報】中国の「国技」ともいわれる卓球界がスキャンダルに揺れている。

 10月19日にマカオ(Macau)で開催された卓球のWTTチャンピオンズ(WTT Champions)男子1回戦。ともに中国代表の梁靖崑(Liang Jingkun)と林高遠(Lin Gaoyuan)が対戦し、梁が3-2で林に勝利した。ところが、梁は何を思ったのか、手にしたラケットの柄をズボンの中に差し込み、そのまま林に歩み寄ってしまった。これが「下品な勝利パフォーマンスだ」などと非難され、SNS上で炎上したのだ。

 梁は「長くスランプに苦しんでいたため、久々に勝利して興奮して舞い上がってしまいました。意図しない行動が林選手に誤解を与えてしまいました」と謝罪コメントを発表。林にも直接謝罪したと公表したが、炎上は収まらず、中国卓球協会(CTTA)が処分に踏み切る事態になった。

 しかし、悪いことは重なる。この処分の内容をめぐって、卓球ファンから賛否両論が噴出したのだ。

 中国卓球協会は10月25日、梁に対して、国内外を問わず、残る2022年度のあらゆる公式大会への出場を禁止する処分を発表した。これで梁はすでに出場権を得ていたWTTカップファイナルズ(10月27~30日)にも参加できなくなってしまった。

 中国では各地にプロの卓球クラブがあるほか、ちょっとした街の公園には据え付け型の卓球台が設置され、そこでは老若男女が日常的に卓球を楽しむ光景がみられる。それほどまでに卓球はメジャーなスポーツであり、その一流プレーヤーが国の威信をかけて戦う世界大会に出られなくなったことのインパクトは大きかったようだ。

 中国大手ポータルサイト「新浪網(Sina)」は「梁が追放されたことで、(日本の)張本智和(Tomokazu Harimoto)が最大の勝者となった」と題する論評を掲載。梁が出場できなくなったWTTカップファイナルズで張本が活躍することを予想し、実際その予測通りに、張本は準優勝を果たした。

 伝統と厚い選手層を誇る中国卓球界だが、近年はWTTカップのように日本人選手の追い上げにあっている。現在、世界ランク4位と2024年パリ五輪代表入りがほぼ確実な梁への出場停止処分は「重すぎるのでは」「強い選手だけに残念」などと同情の声が出ているのだ。

 もともと梁は型破りな性格で知られ、積極的なプレースタイルで多くの卓球ファンを魅了してきた。中国卓球協会は、ファン感情に配慮したのか、厳しい処分を下した梁に対して次のようなメッセージを公表している。

「梁選手は、これを警告として受け止め、自身の問題を直視し、これを前向きに改め、いつか良い心を持って、試合会場に戻ってきてほしい」

 きっと中国の卓球ファンたちも同じ思いだろう。(c)東方新報/AFPBB News