【11月16日 東方新報】中国のSNS上では、かわいい犬や猫の写真とともに「無料でペットの里親になれます」とうたう広告が目立っている。モフモフ好きの人には魅力的な誘いに見えるかもしれないが、実際には病気の動物を押しつけられたり、さまざまな理由で金を払わせられたりとトラブルが絶えない。

 張さんも、そんなトラブルを経験した一人だ。

 張さんは、あるペットショップから子犬を譲り受け、里親契約をした。その際、ショップ側から、すでに打った2種類のワクチン、さらにもう1種のワクチン接種のための費用として788元(約1万6000円)を要求された。また、餌が変わると下痢をするという理由で、子犬が食べ慣れているという商品を買わされ、1700元(約3万3700円)余りを支払った。

 家に帰ってネットを調べたところ、餌は安物で、かなりぼられたことに気づいた。その上、子犬は3日後に病気になってしまった。獣医師の元に連れていったところ、感染症にかかっていたことが分かった。張さんは、ショップに行って本当にワクチンを打ったのか、接種の証明書を見せるように迫ったが、店主はそれには応じず、「死んだら別の犬に交換するけれども、返品はダメだ」と主張したという。

 この「無料里親」の仕組みの中には、動物そのものは無料というものの、ペット用品などの商品の購入契約を結ばされるものも多い。

 あるペットショップで猫の里親となった王さんは、向こう1年間、そのショップで毎月300元(約6000円)を消費するという契約を結ばされた。そこで買った餌や猫用トイレの砂は、高価にもかかわらず粗悪品ばかりだった。だが、契約を解除すれば、その猫の市場価格よりも高く設定された違約金を払わなくてはならない。万一、猫が死んでしまったとしても、1年間はそのショップで何か買い続けなければならない。

 今はやりの「無料の里親」方式だが、現実は人々の善意だけで成り立っているわけではないようだ。その一部が、動物好きの若者を狙う新たなペテンとなった背景には、ペットブームにあやかろうとした悪質な業者が、犬や猫を大量に繁殖させたことがあるという。

「血統も見た目も気にせず、ただ安いだけがペット市場の新たな基準になっている。純血でなかったり見た目が良くなかったりすれば、値段は安くなるが、今は安いものの方がより喜ばれている」。業界関係者はそう明かす。

 ペットの価格は下がり、業者間の競争が激しくなる中で、だぶついたペットたちの新たな「販路」として「無料の里親」方式が登場したというのだ。

 今や、中国では4分の1の家庭でペットを飼っているという。ペットが身近な存在になるにつれて忘れがちだが、命あるものを預かるという選択は、本来、無料だからなどという理由で促されてはならないことを、今一度、思い出す必要があるのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News