【11月15日 People’s Daily】中国の大手ショートビデオアプリの抖音(Douyin)で967万人のフォロワーを抱えるアカウント「モデラーの老原児」の運営者は寧原(Ning Yuan)さんだ。従来的な科学の解説とちがい、手作りのリアルな模型を使って科学の原理を解説するのが人気の秘訣(ひけつ)だ。山火事が起きる理由やエビの体の構造、蚊がなぜ人を刺すのかなどのテーマを、分かりやすく味のあるショート動画で伝えてくれる。

「ポピュラーサイエンスの動画は難解になりすぎて、普及効果が薄れてしまうのでは意味がありません。小学生が見ても分かり、大人が見ても面白いようであれば、それでやっと成功と言えます」と、寧原さんは語る。彼にとっての最大の問題は、多くの人に科学的な知識や思想を最大限伝えるにはどうしたら良いかということだ。

 今、多くのデジタル技術によって、ポピュラーサイエンスの手法はオンラインにも広まった。インターネット技術は空間的な制約を打ち破り、知識の伝達を助け、若い世代が知識や能力を身につける重要なインプットの場になっている。

 2022年6月までに、中国におけるショート動画のユーザーは9億6200万人に達し、インターネットユーザー全体の91.5%を占める。これに伴って、ショート動画の内容も単なる娯楽から多元化しており、より「栄養のある」コンテンツも登場している。

 例えば、基礎的な勉強からハイエンドな設備の製造まで、エネルギー戦略から有人飛行まで、科学者たちはオンラインで最先端の科学知識をシェアしている。ティックトックのプロジェクト責任者によれば、中国科学協会の抖音アカウントでは最近、会員による最先端の科学知識の発表会が行われたという。

「科学技術の発展に伴って、ショート動画で伝えられる知識や内容は生き生きと正確になり、便利になりました。ショート動画で科学的な知識を伝えて一般に普及させることは良いやり方です」と、地質学の専門家である劉嘉麒(Liu Jiaqi)さんは言う。「ショート動画で講座をやると、500万~600万回の再生がされるのです。前は教室で講座をやっていましたが、受講者には限りがありました。動画を使うことで、多くの人に知識が伝わるのです」

 中国ショートビデオアプリ大手の快手(Kuaishou)は、ライブストリーミングを見るシーンなども考えた上で、ユーザーに知識を伝えることを始めた。例えば、夏の午後5時から7時までの夕食を作る前の時間帯に料理を教える動画を配信したり、午後9時から11時のリラックスタイムに楽器関連の内容を配信するなどの取り組みだ。

「ショート動画やライブストリーミングはポピュラーサイエンスの新潮流です」と語る中国伝媒大学(Communication University of China)の副教授である城暁晴(Cheng Xiaoqing)氏によれば、これらの技術は科学知識の普及に大きな力をもたらす。科学的な内容をオーディオ・ビジュアル化し、分かりやすくかみ砕いて一般人にも見やすい形にすることで、芸術性・観賞性を高めることができ、また広い人々のもとに知識を届けることができるからである。(c)People’s Daily/AFPBB News