【11月12日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が2月にウクライナ侵攻を発表したとき、学生のワシリナ・コトワさん(22)は衝撃を受けた。ショックはすぐに絶望へと変わり、やがて抑うつ状態に陥った。

 コトワさんはAFPに「2か月間、家から出なかった」と語った。「何もする気が起きなかった。気力がないというより、何もしたくないというか、意味がないような」

 8か月にわたり続くウクライナ侵攻では、核兵器をちらつかせた脅しや、欧米の制裁によるロシアの孤立、動員令に伴う国民の海外流出が起きた。長期化する紛争の余波が自国にも波及し、先が見えない状態が続く中、コトワさんのように不安やうつ症状に見舞われるロシア人は増えている。

 その結果、国内では抗うつ剤が不足し、心理カウンセリングの需要が急増するなど、精神衛生上の危機が徐々に進行していると、業界関係者は警鐘を鳴らす。

 コトワさんは当初、侵攻開始直後に国外へ逃げた何十万人もの国民を「愚か者」だと思い、侵攻は自分には関係ないと思っていた。だがプーチン大統領が9月に数十万人の動員を発表すると、自分の父親や兄弟が戦場に送られるのではないかと心配するようになった。

 さらに、ロシア政府が証拠もなく、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を使う準備をしていると主張し始めると、コトワさんの母親も懸念を抱き始めた。

 コトワさんは「愚か者は自分なんじゃないかと思い始め、不安がどんどん大きくなっていった」という。