【11月13日 AFP】いてつく夜に氷を踏みつける足音を突風がかき消す。その風でスカートが大きく膨らんだ。

 ボリビアの先住民アイマラ(Aymara)の女性10人がゆっくりと山腹を登っていく。身に着けている伝統衣装は彼女たちにとって、解放を意味する。

 このグループは、登山を通して先住民女性の権利運動に取り組んでいる「チョリータス・エスカラドーラス・デ・ボリビア・ワルミス(Cholitas Escaladoras de Bolivia Warmis)」だ。ボリビアで先住民女性は「チョラ」とか「チョリータ」と呼ばれる。 

 山岳ガイドの父を持つセシリア・リュスコさん(36)は、標高6000メートルを超える雪山ワイナポトシ(Huayna Potosi)の登頂を少女の頃から夢見ていた。

 だがリュスコさんはもっぱら男性の登山準備を手伝うばかりだった。次第に「なぜ私たちは山に登れないの?」と改めて疑問に思うようになった。男性たちからは「女が山でいったい何をしようというんだ」といった反応しか返ってこなかった。

 最初の遠征から7年を経て、ボリビアからペルー、アルゼンチンの10か所前後の山を制覇した今年、チョリータスは再びワイナポトシ山に挑んでいる。

 そしてあくまでも自分たちの装いにこだわった。リュスコさんは長い髪を編み込み、毛糸の茶色い髪飾りを着けている。「女性の強さや勇敢さ、自分たちの服で登頂を成し遂げられることを示したかったのです」

 一行は山小屋で数時間休んだ後、夜の11時に起きると、伝統衣装の色鮮やかな「ポリェラ」と呼ばれるプリーツスカートをはき始めた。

 専業主婦や歩荷(ぼっか、荷物を背負う運搬業者)、ツアーガイドなどさまざまな女性から成るグループは、真夜中に氷河を登り始める。山頂で迎える日の出に間に合うようにだ。

「ポリェラをはいている女性はたくさんの差別を受けてきました」とリュスコさんは言う。国際機関によると、ボリビアはフェミサイド(女性を標的とした殺人)の発生率が南米で最も高い。ボリビア人口の約半分を占める先住民は長年、社会から疎外されている。