【12月3日 AFP】北朝鮮政府は米韓合同軍事演習を侵略の予行演習と呼んで非難してきたが、特に空軍の訓練に神経をとがらせているのは、ハイテク戦闘機や十分な訓練を受けたパイロットが足りず、空軍が弱点となっているためだと専門家はみている。

 朝鮮人民軍の航空・防空部隊の戦力についてまとめた。

■保有する航空機の数

 米国防総省国防情報局(DIA)の昨年の報告によれば、朝鮮人民軍の航空・防空部隊は戦闘機900機以上、輸送機300機、ヘリコプター300機を保有しているとみられている。

 ただし、戦闘機や爆撃機の大半は、数十年前に旧ソ連や中国から調達したもので、かなり古い。保有機の中で最も強力とされる旧ソ連製の戦闘機ミグ29(MiG29)でさえも、導入時期は1980年代後半だ。

 英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)のジョセフ・デンプシー(Joseph Dempsey)研究員はAFPに対し、長期保管されている機体や退役機の割合は不明で、現役機はこの推計よりもさらに少ないだろうと指摘。北朝鮮は「老朽化した」航空機をローテーションさせているとの見方を示した。

■「地上の空軍」

 IISSの2020年の報告書は、北朝鮮には「燃料購入費や維持費が不足し、パイロットを適切に訓練する余裕もない」と指摘している。専門家によれば、燃料不足により飛行時間が不十分で、パイロットは演習どころか戦闘態勢も維持できない状態にある。

 DIAの推計では、北朝鮮の戦闘機パイロットの年間飛行時間は15〜25時間程度。米韓空軍で報告されている平均値よりはるかに短い。

 脱北して韓国の首都ソウルで研究者として活動する安燦一(アン・チャンイル、Ahn Chan-il)氏はAFPに、「北朝鮮の空軍はまともな訓練をほとんど受けていない『地上の空軍』と言っても過言ではない」と語った。