【11月13日 AFP】ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)州スビアトヒルスク(Svyatogirsk)。がれきの中で配給の食料を受け取る人の列には、絶対に顔を合わせまいとしている2人の住民がいた。

 リュドミラ・オルロワさん(61)はAFPに対し、エウドキヤ・ヤロワヤさん(76)に裏切られたと涙を浮かべて語った。「この町が(ロシア軍から)解放される4日前、9月7日でした。彼女はロシア兵に、私が自分の車をウクライナ軍に使わせていたと言ったのです」

「ロシア兵たちは夕方、銃を持ってやって来ました。酔っていて、30分ほど尋問されました。家中ひっくり返されました」。ロシア語話者が多いこの町で、オルロワさんはウクライナ語教師をしている。

 一方、ヤロワヤさんはロシア軍との「付き合いはない」とし、食料援助を受け取るために何回か会っただけだと話した。しかし、ロシア軍への協力が援助の条件だったのかという質問には答えなかった。

■疑惑の修道院

 6月、スビアトヒルスクがロシア軍に占領された時、親ロシア派で当時のウォロディミル・バンドゥラ(Volodymyr Bandura)町長は「解放者」が来たと歓迎し、ロシア国旗を掲げて会見を開いた。9月にウクライナ軍が町を奪還すると姿を消し、現在は国家反逆罪で指名手配されている。

 代わってウクライナ軍から町長に指名された民間防衛隊のリーダー、ウォロディミル・リバルキ(Volodymyr Rybalki)氏は、厳しい冬が迫る中、ロシア軍の「協力者探し」をしている余裕はなく、それはウクライナ保安局(SBU)や警察の仕事だと語った。

 反逆罪に関するウクライナの法律はロシアによる侵攻以降改正され、占領軍に協力し、「死亡または深刻な影響」を招いた場合は禁錮15年または終身刑を科される恐れがある。

 スビアトヒルスクの緊張の中心になっているのが、ウクライナ軍がロシア軍から奪還したウクライナ正教会の修道院だ。

 修道院長は、2014年にロシアを後ろ盾として「ドネツク人民共和国」の樹立を宣言した分離独立派を公然と支持。ウクライナ当局は院内に戦闘員をかくまい、武器を隠していると非難した。

 ウクライナ軍の報道官は、この修道院は「中立の立場を示そうとしているが、ロシアを支持しているのは周知の事実」だと主張している。

 ロシア軍の侵攻に伴って戦闘が激化しても、修道院には約400人の住民が200人の修道士と共にとどまっていた。避難命令が出ても移動しなかったため、「(ウクライナへの)忠誠心を疑われることになった」と同報道官は言う。

 だが、炭鉱労働者から転身したテオファヌス神父(51)は、礼拝でロシア正教会の最高指導者キリル総主教(Patriarch Kirill)に言及することはあっても、「テロリストや分離主義者、武器を受け入れたことはない」と述べ、「ウクライナの人々のために」毎日祈っていると付け加えた。

 映像は10月20日撮影。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU