【11月13日 AFP】海面の上昇によって、モルディブやツバルといった島しょ国が地図から消えてしまう──地球温暖化が加速する中、こうしたシナリオはもはやSFの中だけの話ではない。

 国連(UN)の気候専門家によると、世界の海面は1900年以降、すでに15〜25センチ上昇しており、特に熱帯の一部では上昇ペースが加速している。このまま地球温暖化が続けば、今世紀末までに太平洋とインド洋の島々ではさらに1メートル近く海面が上昇する可能性がある。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が引用した研究によると、2100年までにモルディブ、ツバル、マーシャル諸島、ナウル、キリバスの5か国は居住不能となり、60万人の気候難民が生まれるとみられている。

 モルディブのモハメド・ナシード(Mohamed Nasheed)元大統領は「これは国民、そして国家が直面し得る最大の悲劇だ」とAFPに語った。

■領土なき国家構想

 戦争によって地図上から国家が消えてしまうことはある。しかし、「既存の国家が海面上昇や異常気象といった物理的な事象によって完全に領土を失うという状況はこれまでなかった」と、米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のスムドゥ・アタパトゥ(Sumudu Atapattu)氏は指摘する。

 1933年の「モンテビデオ条約(Montevideo Convention)」による国家の資格要件は明確で、領土、恒常的住民、政府、外交能力の4点だ。仮に領土が海にのみ込まれたり、居住不可能になったりすれば、少なくともこの要件の一つが崩れる。

 アタパトゥ氏は「もう一つ、私が主張しているのは、国家というのは国際法における法的擬制(実際には異なるものを法的には同一であるかのように見なして同一の法的効果を与える)だということ。そのため、領土なき国家を含める新たな擬制を考え出すべきだ」と付け加えた。

 9月に太平洋諸国が打ち出した「ライジング・ネーションズ(Rising Nations)」構想の下敷きになっているのもこうした考え方だ。ツバルのカウセア・ナタノ(Kausea Natano)首相は「たとえ水没しても、われわれの国を認めるよう国連加盟国に納得してもらう」とAFPに語った。

 こうした新たな形の国家についてのアイデアはすでにいくつか出されている。

 気候変動による人口移動を研究する米コロンビア大学クライメート・モビリティー・グローバルセンター(Global Centre for Climate Mobility)のカマル・アマクラニ(Kamal Amakrane)氏はAFPに対し、「領土と国民が別の場所に存在し、政府の所在地はそれらとは別の場所にある、といったことも考えられる」と述べた。

 そのためには、まず国連による「政治的宣言」が必要だ。次に存続が脅かされている国と、亡命政府を永久大使館のような形で受け入れる用意がある「ホスト国」の間で「条約」を結ばなければならない。その場合、国民は二重国籍を持つことになる。