【11月13日 AFP】フランスアルプスのサンフィルミン(Saint-Firmin)村に昔から暮らす住民は、山の上のリフトに乗って、スキーをしに行ったことを覚えている。冬になるとたくさん雪が降り積もった頃の話で、今後はそのリフトも写真でしか見ることができなくなる。

 明るい秋の日差しの中、ヘルメットをかぶったボランティアが集まり、過去15年間使われずにさび付いたスキーリフトの撤去作業を行った。

 火花を散らしながらの作業で鉄塔8基が倒された。バルゴデマール(Valgaudemar)渓谷の草地に樹木のように倒れた鉄塔は解体され、引きずられて待機するトラクターに運ばれた。

 地元議員のディディエ・ボーゾン氏は「もはや定期的に雪が降る気候ではなくなりました。(高価な)降雪機は置けません」と語った。

 標高1550メートルまで上るリフトが建てられたのは1963年。戦後の裕福な新世代がゲレンデに集まった時代だ。

 撤去作業に協力したイタリアのNGOによると、フランスの山岳地帯にはこのように老朽化して使われなくなった設備が3000ほどある。仏アルプスのもっと標高の低い場所やピレネー山脈(Pyrenees)でも同じく、使われなくなったリフトが問題となっている。

 NGOによる不要施設の撤去には、こうした地域にスキーばかりでなく、気候の変化に対応したアウトドアアクティビティーの導入検討を促す目的もある。

 ボランティアの一人は「撤去するたびに、かつてそこでスキーを習ったことがあって悲しむ人はいるでしょう」と語った。「でも、このように気持ちを切り替える勇気のある人々がいるところもあるのです。いずれにしろ、そうすることしかできないのですから」 (c)AFP/Amélie HERENSTEIN