【11月12日 AFP】韓国人の建築学教授イ・テグ(Lee Tae-goo)氏は、北朝鮮による核攻撃が始まった場合に計画していることがある。特設の核シェルターに避難して少なくとも2週間は地下にとどまり、放射性物質による汚染を回避するのだ。

 シェルターは首都ソウルの南東約120キロの堤川(Jecheon)市にあるイ氏の所有地に設置されている。厚い壁と鋼鉄で補強した扉、それに空気清浄機を備えた地下1メートルのシェルターは、核による惨事から身を守り、通常ミサイルの直撃にも耐えられるという。

 核攻撃による放射性降下物に対してしっかり備えるよう、韓国国民に呼び掛けるイ氏の運動の一環だ。「北朝鮮はここから100キロしか離れていません。生物兵器や核ミサイルが飛んで来る恐れがあります」

■「モデルシェルター」

 内務省に相当する行政安全部のデータによると、韓国には全土で1万7000か所以上の防空壕(ごう)があり、そのうち3000か所余りはソウルに集中している。

 同市の地下鉄駅は公共の防空壕も兼ねているが、核シェルターではない。

 韓国では1970年代、主要都市にある一定の大きさ以上の建物に、地下室の設置を義務付ける法律ができた。有事の際に防空壕として使うためだ。

 だがソウルでは地価が高騰し、民間の建物の大半ではこうした地下室は駐車場や、アカデミー賞(Academy Awards)受賞映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』で有名になった半地下住宅に転用されている。

 イ氏が建造した「モデルシェルター」の費用は、人件費を除いて7000万ウォン(約730万円)ほどだが、教育省に申請した研究助成金で賄った。

 イ氏は、このシェルターを見て後に続く人が出てくることを望んでいる。設計図についてはすでに多くの問い合わせがあった。その一つは韓国空軍の当局者で今年、シェルターを見学しに来た。

 イ氏によると、核攻撃に耐えるシェルターを造る人々はそれを秘密にしておきたがる。緊急時に友人や家族、近所の人々が避難場所を求めて押し掛けてくるのを恐れているからだ。

「私がこのシェルターを造った時も、攻撃が始まったらここに来ると皆が言っていました。でもここは12人しか収容できないのです」とイ氏は語った。(c)AFP/Cat Barton and Kang Jin-kyu