■子ども格闘家

 IFMAは子どもの試合参加についても取り締まりを検討している。タイの農村部に暮らす子どもにとって長年、定期的に開かれるムエタイ興行は、貧困から脱出する手段の一つとなってきた。

 賭け試合では1回で数百ドルを稼げる。一方、試合は規制の枠組みの外で、防具なしで行われることが多い。2018年には13歳の選手が試合で死亡し、国内に激しい怒りが広がった。

 フォックス事務局長は、「子どもの試合が今後は開催されないよう」取り組んでいると述べた。

 こうした水準改善の努力は、五輪種目への採用を目指す道のりの一環だ。男女平等や青少年育成、ガバナンスなど、やるべきことはたくさんある。

「誰もが五輪を夢見ている」とフォックス事務局長。「いつの日か、次世代には夢をかなえたい。今は、一歩ずつだ」

■抵抗勢力

 だが、伝統を重んじるムエタイトレーナーの間には、安全基準の厳格化によって競技の「個性」が薄まるとして抵抗感もある。

「もし(選手が)ヘッドギアやすね当てをつけなければならないなら、それはもうムエタイではなくて、ボクシングだ」。こう訴えるアピプラット・ルートラックチーワクンさんは、多くのタイ人格闘家が幼少期からトレーニングを始める点についても擁護する。

「そうしなければ外国人選手に対抗できない。国技なのだから、常にナンバーワンでいなければ」

 パーンペット選手に致命傷を与えてしまったフランス人のアントニー・デュラン(Anthony Durand)選手は、ムエタイを辞めた。28試合を戦っただけで、夢は終わった。

「あれで人生が変わってしまった」とAFPに語った。「毎日が空虚だ。危険なんか気にしたこともなかったのに、死もムエタイの一部だと知ってしまった」 (c)AFP/Alexis HONTANG