【11月5日 AFP】真夏のカナダ・ハドソン湾(Hudson Bay)。照りつける太陽の下、海氷から遠く離れた岩場に1頭の雄のホッキョクグマが座っていた。

 毎年6月下旬、湾内に氷がなくなると同時にホッキョクグマは岸への移動を強いられ、そこから先は飢えが待っている。

 いったん陸に上がると「クマが食べられるものは限られる」。そう説明するのは、ホッキョクグマ保護団体「ポーラーベア・インターナショナル(Polar Bear International)」の生物学者ジェフ・ヨーク(Geoff York)氏(54)だ。

 米国人のヨーク氏は毎年数週間、北極圏の片隅に位置するカナダ・マニトバ(Manitoba)州北部の小さな町チャーチル(Churchill)に滞在し、ホッキョクグマの行く末を見届けようとしている。

 日差しを浴びる雄グマのそばには魚の骨が山積みになっていたが、体長約3.5メートル、体重590キロの巨体を維持するには全く足りない。「陸に上がっている間は、毎日1キロ近く体重が減ります」

 英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に2年前に掲載された論文によると、ハドソン湾西岸では1980年代に約1200頭のホッキョクグマが確認されていたが、現在の生息数は多くても推計800頭にとどまる。

 気候変動はホッキョクグマの生活サイクルそのものを脅かしている。夏季の海氷融解は年々早まり、冬の凍結は年々遅くなっているため、陸に上がって狩りができない夏が来る前に、脂肪とカロリーを蓄える機会が減っているのだ。

 ホッキョクグマの主食はアザラシ、しかも主にその脂肪だ。だが最近では港付近で、子連れの母グマが海藻を食べているのが目撃されている。

「(近年)ここハドソン湾西部と南部のホッキョクグマは、親やその親の世代より1か月も長く海岸で過ごすようになっています」とヨーク氏は憂える。