【10月28日 AFP】オーストラリア人ミュージシャン、ニック・ケイヴ(Nick Cave)さんは27日、米ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)さんの最近の反ユダヤ主義的な発言について、「恥ずべきもの」だが、その音楽の才能は「人格における最悪な面」を超越しているとの見解を示した。

 カルト的人気を誇るケイヴさんは新著について語るため、ロンドン文学祭(London Literature Festival)で登壇した。発売されたばかりの自伝「Faith, Hope and Carnage(原題)」は、40時間にわたるインタビューを元に書かれている。

 質疑応答の際にケイヴさんは、ウェストさんに言及。「私にとって彼は、この時代における最も偉大なアーティストだ。彼の音楽は大好きだ」と語った。

 ウェストさんは近年、奇異な行動が相次いでいる。2020年には、大統領選への出馬を表明するもすぐに撤回し、当時大統領だったドナルド・トランプ(Donald Trump)氏支持を表明した。また、奴隷になるのは「選択」だったとの発言で非難を浴びた。

 最近では反ユダヤ主義的、人種差別的言動を繰り返しており、多くの企業が提携を解消している。

 こうしたウェストさんの言動についてケイヴさんは「本当に残念だ。カニエの曲を聴きたくないと思うこともある」とした上で、「でも、私は作品に価値を置いている。(こうした言動は)個人的な選択だと思う」と話した。

「自分の人格の最悪な面に永遠にとらわれたままではないだろう。彼の音楽と人格は別物だ」

 ケイヴさんはさらに、英人気歌手でバンド「ザ・スミス(The Smiths)」の元ボーカル、モリッシー(Morrissey)さんを例に挙げた。モリッシーさんは、移民に関する発言や、英国の極右政党への支持から人種差別主義者だと非難されている。

「モリッシーは膨大な数の名曲を生み出してきたし、私たちの世代で最も美しい曲も幾つか作ってきた」としながらも「彼は容認されないような意見を持っている」と指摘した。

「これは個人の選択だと考えている。独善的な人々が、自分がある種の上にいると思っているのを見るといらいらする」と話した。(c)AFP