【10月27日 AFP】ロシアとの捕虜交換で解放されたウクライナの衛生兵テチャナ・ワシリチェンコさんは、バスの中で自国の国旗を渡されると、涙がせきを切ったようにあふれた。「戦友を失っても泣いたことはなかったのに」

 ワシリチェンコさんを含むウクライナ女性108人は先週、ロシア政府との長期間にわたる交渉で実現した捕虜交換により解放された。うち4人の女性が26日、首都キーウで記者会見し、満員の刑務所で空腹に耐え、身体的虐待や屈辱を受けた体験を語った。

 ウクライナの抵抗の象徴となった同国南部アゾフスターリ(Azovstal)製鉄所で捕らえられた従軍看護師のビクトリア・オビジナさんは「拘束下の状況はおぞましいものだった」と証言。捕虜たちは「イワシのように詰め込まれ」、食事はまずく、外に出て散歩することもほとんど許されなかったという。

 今週これに先立ちAFPの取材に応じたオビジナさんは、ロシア軍に占領された東部ドネツク(Donetsk)州オレニフカ(Olenivka)にある悪名高い刑務所に収容されていたと語った。看守からは、ウクライナの民間人と共にアゾフスターリ製鉄所から避難した娘は孤児院に送られたと告げられたという。

■「あの人たちは怪物」

 女性捕虜たちは「強烈な心理的圧力」をかけられ、常に屈辱的な思いをさせられていたとワシリチェンコさんは語った。看守はたびたび、「ウクライナはお前たちを欲していない。誰も捕虜交換しようとしないのは、皆から忘れられているからだ。誰が女のお前らを必要とするのか?」との言葉を浴びせたという。

 ドネツク州のボランティア活動家リュドミラ・フセイノワさんは3年間にわたり拘束されていた。2019年、世話をしていた孤児たちに対してウクライナ政府を支持する発言をしたとの理由で、親ロシア派武装勢力に拘束された。

 心に負った傷はとても深く、自身の体験を語ることができないほどだった。「解放されてからまだ間もないため、難しい」

 陸軍海兵のインハ・チキンダさんも、心の傷がまだ鮮明に残っている。拘束中に体重は8キロ減り、吃音(きつおん)の症状が出るようになった。

「身体的虐待についてはまだ話す準備ができていない」とチキンダさんは説明。「あの人たちは怪物だ」と語った。(c)AFP