【11月20日 AFP】お茶のような見た目で黄色味を帯び、カルダモンの強い香りが漂うアラビアコーヒーは湾岸諸国のもてなしの象徴だ。今年のサッカーW杯(World Cup)の開催国カタールでも親しまれている。

「カフワ」と呼ばれるアラビア伝統のコーヒーは、焙煎したコーヒー豆にカルダモンとサフランを加えて煮出す。カタールでは通常、男性だけの社交の場「マジリス」で味わうものだ。

 カタールに住んで3年になるスリランカ出身のランカ・ペレラさん(29)は「コーヒーが入っているなんて知りませんでした」とカフワについて語り、誰もが知っているコーヒーの味はしないと言った。

 習わしでは家長が客人の前で入れた温かいカフワを、長男が出す。

 だが最近はそうしたしきたりを超えて、商業施設や文化施設でもカフワが提供され始め、在住外国人や観光客もカタール文化の味わいを体験できるようになった。

 約600年前にアラビア半島に伝わったコーヒーは、地域独自の儀式性をまとうようになり、今ではアラビア、そしてカタールにとって不可欠な文化となっている。

 金色や銀色のポット「ダッラー」から小さなカップに注がれる量が少なめなのは、飲み手が指をやけどしないようにとの配慮からだ。

 そして飲み手が「もう結構です」と手振りで示すまで、カフワはカップに注がれ続ける。手振りで知らせるのは、かつてマジリスで耳の不自由な給仕人につがせ、外部に秘密の情報が漏れるのを防いでいた名残だ。

 アラビアコーヒーはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、カタールの申請により、2015年に国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。(c)AFP/Raphaelle Peltier