【10月19日 東方新報】中国では近年、「タトゥー(入れ墨)の低年齢化」が社会問題となっている。中国西部の陝西省(Shaanxi)では最近、タトゥーショップを経営する男が未成年43人にタトゥーを施し、消費者の権利を侵害したとして、検察が民事公益訴訟を起こした。陝西省靖辺県(Jingbian)の裁判所は被告の男に対し、今後は未成年者へのタトゥーを禁じ、判決から10日以内に書面で公開謝罪するよう命じた。男はインターネットで機械や針、顔料などを購入し、未成年者の腕や手の甲にタトゥーを入れていた。

 中国の一部の若者の間では、タトゥーが「クール」だと憧れる傾向が強まっている。インターネット上では堂々とタトゥーの広告が出され、都市部ではタトゥーの店舗が多数見られる。江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)のある店舗は「5センチのタトゥーは1.9元(約39円)」という低価格をPR。ただ、腕全体にタトゥーを入れた場合は3000元(約6万2131円)などと値段は張る。

 中国政府は6月6日、「未成年者の入れ墨規制に関する弁法」を施行。「いかなる企業、組織、個人も未成年者に入れ墨を施してはならない。企業やメディアは未成年者に入れ墨を誘導するような広告を掲載・放送してはならない」と明記した。インターネット上ではすぐに「未成年者本人が望んだ場合はどうなる」「親が合意すればいいのか」という疑問の声が出た。これに対し民政省児童福祉局は「未成年者は民事行為を担う能力がなく、入れ墨を入れることは未成年者が合理的に判断する範囲を超えている。本人の意思より保護が優先される」と見解を表明。また、未成年者保護法では「保護者は未成年者の身体や精神的健康を侵害してはならない」としており、親がタトゥーを認めることも問題だとしている。

 専門家によると、タトゥーショップで使われる顔料には重金属が含まれ、使用されているモーターの機械や針は生産日、品質合格証、生産者がいずれも明記されていない「三無商品」が多いという。タトゥーショップでは、訪れた客が「未成年者ではない」と言えば、身分証明書の提示を求めないケースも少なくないという。北京市の朝陽病院皮膚科副主任の張岩崑(Zhang Yankun)医師は「針が適切に消毒されていないとHIVやB型肝炎などの感染症の恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 2020年の浙江省(Zhejiang)監察機関の調査では、罪を犯した363人の未成年のうち、タトゥーをしている割合は50.5%に上った。このうち16歳までにタトゥーを入れた割合は97%に達していた。タトゥーを入れることで社会から不良のレッテルを貼られ、より犯罪に向かわせる傾向があると考えられている。また、衝動的にタトゥーを入れた後に後悔し、数倍の費用と長い期間をかけてタトゥーを除去する未成年者も多いという。

 北京市の京品法律事務所の金増玉(Jin Zengyu)弁護士は「成人がタトゥーを入れることは個人の自由だが、成長過程の未成年者は保護の対象であり、明確に区別する必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News