【10月19日 AFP】韓国ソウルで開催されたスポーツクライミングのアジア選手権で16日、イラン女子代表のエルナズ・レカビ(Elnaz Rekabi)選手(33)が、女性の髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」を着用せずに出場した。ヒジャブ非着用はイランの服装規定に違反しており、同選手の身の安全に対する懸念が広がっている。

 イランでは1か月前から、服装規定違反の疑いで逮捕されたマフサ・アミニ(Mahsa Amini)さんの死をめぐる女性主導のデモが続き、ヒジャブ着用義務や国自体に対する抗議運動に発展している。一部の人々は、レカビ選手のヒジャブ非着用をこうした抗議運動への連帯を示した行為として受け止め、ソーシャルメディア上で同選手を「英雄」とたたえている。

 レカビ選手は当初、沈黙を続けていたが、18日に自身のインスタグラム(Instagram)アカウントに大会後初となるコメントを投稿。「心配」をかけたことを謝罪し、ヒジャブを着用しなかったことは「意図的ではなかった」と説明した。

 だが、このコメントについては、韓国でイラン当局から圧力をかけられて行ったものだとの疑惑が浮上。さらに英BBCは消息筋の話として、友人たちがレカビ選手と連絡が取れず、代表チームは出発予定日2日前の17日にソウルの宿泊所をたったと伝えた。

 ニュースサイトのイラン・ワイヤ(Iran Wire)は、同国クライミング連盟の会長がレカビ選手を「だまして」在韓イラン大使館に入館させたと報道。同選手は大使館から直接空港に連れていかれる見通しで、会長から携帯電話とパスポートを渡すことを条件にイランへの安全な渡航を約束されたと報じた。

 一方、イラン大使館はAFPに対し、レカビ選手の状況に関する「すべてのフェイクニュースや偽情報」を否定すると表明。同選手は18日にチームメートと共に韓国を出国したと説明した。(c)AFP/Stuart Williams