【10月18日 AFP】サッカー元アルゼンチン代表のレジェンド、故ディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)氏が「神の手」ゴールを決めた際に着用し、スポーツ関連の品として当時の史上最高額となる落札額で取引されたばかりのユニホームが、W杯カタール大会(2022 World Cup)の開幕を控える同国の博物館で展示されている。

 1986年W杯メキシコ大会(1986 World Cup)のイングランド戦でマラドーナ氏が着用し、匿名の落札者によって930万ドル(約13億7000万円)で購入されたこのユニホームは、3-2-1カタール五輪・スポーツ博物館(3-2-1 Qatar Olympic and Sports Museum)に貸し出され、来年4月1日まで展示されることになっている。

 当時の史上最高額を支払ったこの買い手の名をカタール側は明かしていないが、ユニホームが落札された5月4日から数週間後には交渉が始まっていたという。

 この博物館の館長で、カタール首長一族のマヤサ・ビント・ハマド・ビン・ハリファ・サーニ(Al-Mayassa bint Hamad bin Khalifa al-Thani)王女は、W杯に向けた特別展示でこのユニホームを確保でき「興奮」していると述べた。

 マヤサ王女はAFPに宛てた発表文の中で、「このユニホームはものすごい旅を経験してきた」と記した。

「スティーブ・ホッジ(Steve Hodge)が試合後にマラドーナとユニホームを交換したときから始まったが、今となっては素晴らしい行動だった」

 メキシコ市のアステカ・スタジアム(Azteca Stadium)で行われたこの試合では、マラドーナ氏の2得点でアルゼンチンがイングランドに2-1で勝利した。

 この一戦はサッカー史上最も話題になった試合の一つであり、心臓発作で2020年11月に60歳でこの世を去ったマラドーナ氏の伝説的な地位を確立するものになった。

 手でボールを流し込んで相手GKピーター・シルトン(Peter Shilton)氏から先制点を奪ったマラドーナ氏は試合後に、ゴールを決めたのは「マラドーナの頭が少し、神の手が少し」だったと語った。

 マラドーナ氏は神の手ゴールの直後にも5人抜きゴールを決めており、こちらは2002年に行われた国際サッカー連盟(FIFA)の投票で「世紀のゴール」に選ばれた。

 20年にわたりこのユニホームを英マンチェスターの博物館に貸し出していたホッジ氏が競売に出すと、匿名の買い手がアルゼンチンサッカー協会(AFA)を含む6人の入札者に競り勝った。落札額は、競売大手サザビーズ(Sotheby’s)が予想した値の倍以上だった。

 しかし9月16日、米プロバスケットボール(NBA)の名選手として知られるマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)氏のユニホームが1010万ドル(約14億8000万円)で落札されたため、スポーツの記念品および試合で着用されたユニホームとしての史上最高額は更新された。

 マラドーナ氏のユニホームが飾られている「ワールド・オブ・フットボール」という展示では、1930年に開催された第1回W杯ウルグアイ大会(1930 World Cup)決勝で使用された公式球やサッカーの競技規則が書かれた最初の書物、世界に二つしかない元ブラジル代表FWペレ(Pele)氏の右足をかたどった像の一つ、他のレジェンドのユニホームが並べられている。

 マヤサ王女は「3-2-1カタール五輪・スポーツ博物館の展示品の多くは、人間の情熱の象徴であり、その背後には長く感動的な物語がある」と話した。

「これらの品々は、世界の文化の一部として感動や記憶を呼び起こし、対話の火付け役となり、今や独自の命を宿している」

 映像は2日撮影。(c)AFP