【10月18日 東方新報】多くの民族と文化が往来したシルクロードの歴史を受け継ぐ中国・甘粛省(Gansu)で、文化財の修復に努める若手の育成が行われている。

 甘粛省蘭州市(Lanzhou)にある蘭州職業技術学院(Lanzhou Vocational Technical College)。その中に、甘粛省で初めて「無形文化遺産」の名称がついた教育機関「無形文化遺産学院」がある。同学院の文化財修復保護学科2年の馬亜東(Ma Yadong)さんは、破損した古書の「手術」を行っている。

 古書を束ねる糸や紙くぎを外し、ブラシでほこりを取り払い、紙に付着した油などの汚れや腐食したのりを洗浄液で洗い落とす。破損した紙切れをピンセットで慎重に取り除き、破れ目に丁寧に紙をはりつける。ページのゆがみを直しながら本を再び束ね、元の姿に戻す。ただ作業を進めるのではなく、「修旧如旧(古いものを古いままに)」の精神で修復することが最も大事だ。

「文化財の修復とは、歴史や古代の人びとと対話し、文化財の背後にある物語を理解することです」と馬さん。シルクロードのオアシス都市として栄えた敦煌などのありし日の姿と、そこで生きていた人々の姿を思い浮かべる。同級生からは「文化財ドクター」と呼ばれる馬さんだが、「私の技術はまだまだ未熟。文化財を修復することで、自分の心も養っています」と気を引き締める。

 中国の古典文化への関心が高かった馬さんは高校卒業後、文化財修復保護学科への進学を選んだ。「最初の座学は少し退屈でしたが、修復の実践に入り文化財を『生き返らせる』ことで達成感を得られました」。古書の修復とともに手掛けているのが、磁器の修復だ。「割れてしまった磁器を見ることは苦痛ですが、元の状態に戻すことができた時、私は磁器の作者と時空を超えて会話しているように感じます」と笑顔を浮かべる。

 文化財修復保護学科の卒業生は全国の博物館や記念館、展示館、文化財保護機関などに就職している。馬さんは今年、インターンシップ(就業体験)で浙江省文化財考古学研究所に行く予定だ。「第一線の場で専門家から多くのことを学び、将来は文化財修復の仕事に励みたい」と目を輝かせる。(c)東方新報/AFPBB News