【10月14日 AFP】ウクライナ軍がロシア軍への反転攻勢を強めているウクライナ南部の前線付近では、破壊されたロシア軍の自走式ロケット砲3基の黒焦げてさびた残骸が放置されていた。

 最近ヘルソン(Kherson)州の一部奪還に成功したことに勇気づけられたウクライナ兵たちは、2月24日のロシア軍の侵攻開始直後に陥落した州都ヘルソンに冬までに到達したいと考えている。

 旧ソビエト連邦製のBM27自走式多連装ロケットランチャー「ウラガン(Uragan)」がウクライナの攻撃で破壊されてから1週間近くがたっていたが、現場にはまだ煙の臭いが漂い、8輪で支えられた巨大なロケット砲の中には数発のロケット弾が残っていた。

 あるウクライナ兵はAFPに、「再装填(そうてん)しているところを攻撃した」と語った。少し離れた場所にはトラックも乗り捨てられ、近くの草むらにロシアのナンバープレートが転がっていた。

 トラックには、貴重な積み荷が無傷で残されていた。ウクライナ軍が必要としているウラガンロケット弾12発だ。「間もなく積まれて、われわれの元へ運ばれてくる」と兵士は語った。

 同じくロシア軍から奪った火薬のたるは、すでに近隣のウクライナ部隊に届けられた。地面には、空になった他のたるが散乱していた。

■ロシア軍の士気「低い」

 救助隊員の男性は「ロシアは組織的に撤退したと言っているが、そうであれば武器や下着、枕を置いていかないはずだ」と語った。

 別の兵士は、ロシア軍の士気は「低い」とし、「世界で2番目の軍隊が、世界で22番目の軍隊を恐れている」と語った。「減速はせず、速度を上げて、ロシア軍を川の向こうに追いやるべきだ」

 兵士が言及した川はドニエプル(Dnipro)川。ウクライナ軍はここ数週間で川の西側に進軍したが、対岸は今もロシア軍の支配下にある。ロシア軍は新たな防衛線を固めて部隊を再編成しており、援軍として数多くの兵士も加わった。

 米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」のジョージ・バロス(George Barros)氏によると、ロシア軍は先月上旬、ヘルソン州北部の占領地を失ったが、この地域にはいくつかの村があるだけで、駐留していた兵士は少なかった。だが現在、ロシアの戦線は「より引き締まって」おり、防衛が強化されたことでウクライナの進軍が困難になってきているという。