【10月14日 AFP】ベトナム・ハノイでフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)を開催するという望みが薄れつつある中、フェンスが張りめぐらされ、プラスチック廃棄物が散らばっている同都市にあるサーキットは、大部分が放置されたままになっている。

 ハノイでは2020年に初めてF1が開催されるはずだったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって中止に追いやられると、ベトナムGP(Vietnam Grand Prix)はその後もカレンダーに組み込まれていない。

 現在では観客席が撤去されており、交通渋滞で知られる同都市において、広大なスペースに誘われてこっそり忍び込んで趣味を楽しむ数少ないサイクリストを除いては、サーキットはほぼ使用されていない。

 サイクリストたちは黄化した芝、雑草、風で吹き飛ばされてきたごみの間を走っているが、トラック自体はほぼ未使用のままで、アスファルトにペイントされた「Vietnam」の文字はいまだにはっきりと確認できる。

 鉄製のフェンスの外側では、市内ならどこにでもあるオートバイが、かつて1周5.6キロのトラックの一部になる予定だった道路をすでに埋め尽くしている。

 ベトナムは2018年、その魅力がハノイの古びたイメージを刷新し、同国に経済成長をもたらすと確信してF1側と10年契約を結んだ。

 年間6000万ドル(約88億円)にも上る費用は、華麗なナイトレースを開催することを願っていた同国最大の民間コングロマリット「ビングループ(VinGroup)」が負担する予定だった。

 しかし、2020年大会の中止が決まった後、ベトナムGPの主要支援者でハノイ市人民委員会(Hanoi Municipal People's Committee)のグエン・ダク・チュン(Nguyen Duc Chung)元主席が逮捕されたため、同レースは2021年以降のカレンダーから姿を消している。汚職の疑いで逮捕されたグエン元主席には、禁錮10年の判決が言い渡されている。

 レース関係者は2020年、匿名を条件にしたAFPの取材に対し「チュン氏がいなければ、ハノイでのレースの未来に希望はない」と語っていた。

 ベトナムの政府系メディアによれば、ハノイ当局は昨年6月、2022年から2029年のレース開催を除外したという。前月に発表された2023年のF1カレンダーでも、ベトナムGPは含まれていなかった。

 映像は10月11日に撮影した現在のサーキット周辺の様子と、2019年、2020年に撮影した資料映像。(c)AFP/Tran Thi Minh Ha