【10月13日 AFP】元フィギュアスケート選手のサラ・アビトボル(Sarah Abitbol)さんは、10代の頃にコーチからレイプされたと告発し、フランススポーツ界における性的虐待の実態を明らかにしたが、その結果自分が「罰せられた」と感じていると話した。

 性的暴行に対する認識を高めたことで「ヒロイン」と称賛されたアビトボルさんは、カミングアウトしたことで「罰せられた」と感じることもあるというが、悲惨な経験をさらけ出す自身のアプローチは何も変えないと強調した。

 世界フィギュアスケート選手権(ISU World Figure Skating Championships)の銅メダリストであるアビトボルさんは、AFPのインタビューに対し「もしもう一度しなければならないのなら、もっと早くやる」と話した。

 現在47歳のアビトボルさんは、自分のストーリーを伝えたいという強い欲求に駆られて2020年1月に自伝を出版。その中で15歳から17歳だった1990年から92年にかけて複数回レイプされたとして元コーチのジル・ベイヤー(Gilles Beyer)氏を糾弾した。

 約30年が経過していたものの、この証言は劇的な効果を発揮し、フランス・アイススポーツ連盟(FFSG)のディディエ・ガイアゲ(Didier Gailhaguet)元会長の辞任につながった。

 欧州選手権(ISU European Figure Skating Championships)のペアで7度メダルを獲得したアビトボルさんは、「この本は私にとって最後のチャンスだった。普通に生きられずにうんざりしていた。目を背けたいから自身の深い問題を自覚せず、人生が過ぎ去ってしまうこともある」と話した。

 ハリウッド(Hollywood)から世界中の役員室に至るまで、劇的な変化を促したセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)の告発運動「#MeToo(私も)」が始まってから3年後に虐待を暴露したアビトボルさんは、「2020年に社会は耳を傾ける準備ができていた。大打撃を与えて、この抑圧から自分自身を救い、次の世代を助けるためのメディアの力があった」と当時を振り返ると、「50以上のスポーツ連盟が影響を受けた。ひどいことではあるが、同時にポジティブでもある。私たちは認識を高めた」と語った。

 2023年2月から4月にかけて開催予定のホリデー・オン・アイス(Holiday on Ice)に向けたプログラムの準備中だというアビトボルさんは、このアイスショーが「暴力行為の全ての犠牲者に対するメッセージ」になると約束した。(c)AFP/Sabine COLPART